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映画『One Night,One Love/ワンナイト、ワンラブ』

カテゴリ
EXTRA-PICK UP
公開
2012/10/25   17:07
ソース
intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)
テキスト
text:大石昌稔 (タワーレコード新宿店)

イギリス最大級のロックフェスを舞台に手錠で繋がれた偶然が恋に変わる瞬間!

2011年にイギリスで公開され、個人的にも日本国内での公開を熱望していた『One Night , One Love(原題:You Instead)』が11月3日より全国ロードショーが決定した。FUJI ROCK FESTIVALやSUMMER SONICなど、すっかり日本でも定着化した夏フェスだが、その夏フェスを舞台として全く新しく、そして斬新な発想と演出で魅せる体験型ロック・ムービーがいよいよ日本にも上陸する。

人気絶頂のエレクトロ・ポップ・デュオ〈THE MAKE〉のシンガー、アダムがスコットランド最大級の野外フェス〈T in the park〉に出演の為やってきたのだが、バックステージで売り出し中の新人バンド〈DIRTY PINKS〉のヴォーカル、モレロと、ひょんな事から大喧嘩に。そこに現れた謎の老人から喧嘩を仲裁する手段として2人を手錠で繋いでしまう!しかも、その老人は、その後、どこかに行ってしまい、自分のバンドの出演時間が迫るなか、手錠を外す術がなくなってしまったアダムとモレロは…。

監督は『猟人日記』『パーフェクト・センスなど独特の感覚や映像センスで注目を集める新鋭デヴィッド・マッケンジー。撮影も2010年に開催された野外フェス〈T in the park〉の開催期間中、たった5日間で寝泊りしながら撮影されたというから驚きだ。お互いの出演時間が迫る中、手錠で繋がれた緊迫感と裏腹の夏フェスならではの多幸感が入り乱れていく展開と編集が素晴らしいだけでなく、実際のフェス会場での撮影も音楽映画としての魅力に作用している。実際、劇中には、今年のFUJI ROCK FESTIVALにも出演したGOSSIPや、常に良質の音楽を生み続けているスコットランドのグラスゴーからJO MANGOも登場し素晴らしい演奏を聴かせてくれるのも本作の体験型ムービーとしての醍醐味である。特にJO MANGOが登場するシーンは手錠に繋がれた2人の感情に新しい何かが芽生える瞬間なのだが、JO MANGOの音楽と2人の感情が見事に重なり合っていることも見逃せない。

本作のハイライトとして、手錠に繋がれた2人の演奏シーンと、THE MAKEのライブシーンが公開当時、本国イギリスでもNME誌等で話題となったが、実際のフェス会場でのやり直しがきかない一発撮りの緊張感と観客のテンションが最大級に高まる瞬間は、実際、夏フェスに行ったことがない人でも手に汗にぎる名場面と断言!個人的にも、手錠に繋がれたままでの不自由さがバンドの演奏にアドリブ的な偶然性の要素が盛り込まれ、観ている側に予想外の多幸感に与えるこの場面は、いままで観てきたロック・ムービーの中でも最高峰の名場面!

また、THE MAKEの楽曲だけでなく、本作の音楽監督であるEUGENE KELLYの仕事も見逃せない。ユージン・ケリーと言えば、今年の夏に来日もしたTHE VASELINESのメンバーとして、またグラスゴーの音楽シーンを語る上でも欠かせない存在。私自身、THE VASELINESが一番好きなバンドと言うこともあり、今年の来日は全公演、拝見したのだが、この映画で作った彼の曲が、いままでの作ってきたものとは違う、エレクトロ・ポップな曲だったことも驚いた。どうやら、この映画に合わせて、MGMTやKILLERSといったバンドの楽曲を参考にしたというところも見事としか言えない。

この映画は夏フェスに行ったことがある人はもちろん、また行ったことがない人でも行った気にしてくれる最高の体験型ロック映画。そして、手錠に繋がれてしまうという最悪な偶然から始まる最高の恋愛が単なるロック映画の範疇に収まらないスリリングさを是非とも劇場の大画面、大音量で体験してほしい。

映画『One Night, One Love/ワンナイト、ワンラブ』

監督:デヴィッド・マッケンジー
音楽監督:ユージン・ケリー/ブライアン・マッカルパイン
出演:ルーク・トレダウェイ/ナタリア・テナ/マシュー・ベイントン/ルタ・ゲドミンタス/アラステア・マッケンジー/
ギャビン・ミッチェル/ソフィー・ウー
配給:グラッシィ(2011年 イギリス 80分)
www.onenight-onelove.com

◎11/3(土)、渋谷シネクイントほか全国ロードショー!