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Brad Mehldau Trio『Where Do You Start』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/11/02   21:44
ソース
intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)
テキスト
text:渡辺亨

待ってましたのカヴァー集が登場! 

今年3月に発表された『Ode』に続いて、早くもブラッド・メルドー・トリオの新作『Where Do You Start』が届けられた。ファンにとっては嬉しいサプライズだろう。とはいえ、『Where Do You Start』は、『Ode』の後に録音された新作というわけではなく、前作と対を成すアルバムだ。

全11曲のうち、5曲は2008年11月17日、6曲は11年4月19日に録音されている。この録音時期は、『Ode』と同じ。スタジオも、録音エンジニアも共通している。ただし、『Ode』が全編ブラッド・メルドーのオリジナル曲で構成されていたのに対して、『Where Do You Start』は1曲を除き、カヴァーだ。

当然のごとく、今回もさまざまなジャンルの曲が選ばれている。ジャズではソニー・ロリンズやクリフォード・ブラウン、ロックではジミ・ヘンドリックスやアリス・イン・チェインズなどに加えて、またしてもニック・ドレイクの曲が取り上げられている。そして09年と今年7月の来日公演ですでに披露されていたスフィアン・スティーヴンスの《Holland》が、ようやく初録音されている。個人的に嬉しいのは、こうしたジャズやロックの曲に混じって、ブラジルのシコ・ブアルキとトニーニョ・オルタの曲が取り上げられていることだ。トニーニョ・オルタは、パット・メセニーに影響を与えたことでも知られるギタリスト兼作曲家。よってメルドーは、もしかするとメセニーを通じてこのオルタの《Aquelas Coisas Todas》を知ったのかもしれない。一方、シコ・ブアルキの曲は、彼の作品の中でも屈指の名曲《Samba e Amor》。今年のメルドー・トリオの来日公演でもっとも意表を突かれた選曲、およびもっとも心を揺さぶられた演奏は、ポール・マッカトニーの《My Valentine》だった。この《Samba e Amor》は、あの時に味わった感動が甦ってくる逸品。シコに最大級の敬意を払っているようなリリカルな名演である。

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