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THE HOT 8 BRASS BAND

連載
360°
公開
2012/12/21   19:30
更新
2012/12/21   19:30
ソース
bounce 350号(2012年11月25日発行)
テキスト
構成/編集部


ホット8ブラス・バンドが地元に捧げた思いとは



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皮肉にもハリケーン〈カトリーナ〉の被害によって、改めてその素晴らしさをより広い層に知らしめることとなったニューオーリンズの音楽シーン。悲劇から7年の時が経っているが、その間にもジャム・バンドを下地にヒップホップ要素を積極的に導入して大きくなったギャラクティックをはじめ、そのベン・イールマンの手掛けた昨年の『For True』も記憶に新しいトロンボーン・ショーティ、あるいはダーティ・ダズン・ブラス・バンドやリバース・ブラス・バンドらの伝統的な楽団が、それぞれの活躍によって新しいリスナーからの支持をも取り付けていることはよくご存知のことだろう。ここで紹介するホット8ブラス・バンドもまた、ジャズやファンク、ソウルをベースにヒップホップからの影響も吸収している8人組のブラスバンドである。

マーヴィン・ゲイ“Sexual Healing”の名カヴァーによってヨーロッパで脚光を浴びた彼らのファースト・アルバム『Rock With The Hot 8』は〈発見者〉であるトゥルー・ソーツから2007年にリリースされた。メイズ“We Are One”(ニューオーリンズの土地柄を考えればこちらのほうが重要だったりする)やトラディショナルを取り上げた同作を引っ提げ、バンドはツアーの敢行やパレードへの参加、プロジェクトへの貢献活動を通じてライヴを展開。ベースメント・ジャックス“What's A Girl Gotta Do”への参加や、モス・デフやメアリーJ・ブライジ、ローリン・ヒルといった大物のバック演奏も務めるなど飛躍的に大きく成長した。そんな充実の期間を経ていよいよ完成されたのが、バンドとしてのセカンド・アルバム『The Life & Times Of...』である。

そもそも、先述のファースト・アルバムは2005年に自主リリースされていたわけで、実質的にはこれがまさに7年ぶりの新作であり、〈カトリーナ〉のために被災して亡くなったメンバーもいる彼らにとって、つまりは悲劇を反映させた初めてのアルバムということなのだ。

「2枚の作品により、嵐が来る前と後の両方を祝うんだ。亡くなった者たちの魂を解放させ、俺たちの町とバンドメンバーの人生を祝福するような2枚になるはずだ」(ベニー・ピート、チューバ)。

リーダーのベニーが語る通り、今回の『The Life & Times Of...』は対になるアルバム・プロジェクトの第1弾という位置付けだとのこと。今回の内容は、死者を盛大に送り出す土地ならではの哀しくも愉快なパーティー・グルーヴをストレートに表現した楽曲がメイン。メンバーのジョセフ・ウィリアムズが地元警察によって命を奪われたことも関係しているのだろうが、キャッチーなフックを備えたダンサブルな仕上がりは、ニューオーリンズ・ブラスならではの爆発力に溢れている。グラフィティ・アーティストのバンクシーによるパブリック・アート(もちろん@ニューオーリンズ)も印象的。まずは喜怒哀楽をすべて内包したこのアルバムをとことんファンキーに楽しんで、第2弾の到着も楽しみに待つとしよう。



▼関連盤を紹介。

左から、ホット8ブラス・バンドの2005年作『Rock With The Hot 8』(Tru Thoughts)、ギャラクティックの2012年作『Carnivale Electricos』(Galactic Funk/Anti-)、トロンボーン・ショーティの2011年作『For True』(Verve Forecast)、マーヴィン・ゲイの82年作『Midnight Love』(Columbia)、ベースメント・ジャックスの2009年作『Scars』(XL)、ラック・オブ・アフロの2011年作『This Time』(Freestyle)

 

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