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トーマス・ニューマン&アデル『007/スカイフォール 』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/12/12   12:32
ソース
intoxicate vol.101(2012年12月10日発行号)
テキスト
text:冨永昌敬(映画監督)

まずは、スクリーンで映画を観てからね!

映画の楽しみ方のひとつに、サウンドトラックや主題歌を聴く、というものがある。観たばかりの封切映画を彩った美しい音楽を反芻すると、主人公やヒロインにもう一度会えたような気がして嬉しくなってくる。

その逆の場合もある。今でこそDVDやBlu-rayという簡便な映像メディアのおかげで、名の知られた作品のほとんどを自宅で観ることができるが、十年ちょっと前までは、未公開の映画(特に洋画)にひたすら憧れを抱き続ける映画ファンの姿というものが確実にあった。

そんなとき慰めてくれたのが、ほかでもないサントラであったことを覚えているはずだ。映画は観られないが、輸入盤のサントラをタワレコで見つけた、といった話は多く、つまり観てもいない映画の音楽だけを聴くという「楽しみ」を、かつての私たちは大事にしていたのである。

で、僭越ながら私の置かれている状況というのがまさにそれだ。この原稿を書いている現在が11月26日、『007 スカイフォール』の封切日が12月1日、しかしサントラと主題歌のCD発売日がいずれも11月21日。要するにこの映画を観られるまでにあと数日かかる一方、映画音楽だけは先に聴くことができるわけだ。この時差を我慢するかどうかは人それぞれだが、サントラを聴きながら映画を想像してみるのも(それはそれで)楽しいはずだと考える私は、これを迷わず聴いてみたのである。

なにしろスリルとアクションに満ちたあの007シリーズなのだ。音楽だってそのように出来ており、聴いていると緊張を強いられ、腰が落ち着かなくなってしまうというのは、私だけだろうか。フルオーケストラによってスリル&アクションを描写したと思しき大袈裟な劇伴音楽は、それらが映画のなかでどのように使われたかを知ってこそ楽しめるものだとわかった。

なのでこのサウンドトラックは、ぜひとも映画本編をご覧になった上で鑑賞されたい。それはグラミー賞シンガーの歌う主題歌のほうも同じだ。ともかく映画の後にしたほうがいい。この大袈裟な音楽をまともに聴くためには、その大袈裟にふさわしい巨大な映画をまずは観なければならなかったようだ。

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