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エサ=ペッカ・サロネン&フィルハーモニア管

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公開
2012/12/19   11:42
ソース
intoxicate vol.101(2012年12月10日発行号)
テキスト
text:前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)

©clive barda

生誕100年のルトスワフスキの《交響曲第4番》が聴ける!

1998年に東京オペラシティで開催されたサロネン指揮フィルハーモニア管のリゲティ演奏会は、本当に素晴らしかった。キワモノ的な興味抜きに、リゲティの管弦楽作品があれだけ純音楽的に東京で演奏されたのは、たぶんあの時が初めてだったのではないか。それから15年。同じコンビが、今度はルトスワフスキの《交響曲第4番》を東京オペラシティに持ってくる。そもそも2013年は、ルトスワフスキ生誕100年。その彼が生前完成させた最後の大作(作曲者自身の指揮による初演は死の前年の1993年)とくれば、これを聞き逃すわけにはいかない。

だいたい、僕たちはルトスワフスキのことをあまりにも知らなさ過ぎた。1944年のワルシャワ蜂起の際、《24のカプリース》を編曲した《2台ピアノのためのパガニーニの主題による変奏曲》の楽譜だけ鞄に詰め込み、母親と逃亡したルトスワフスキ。スターリン時代に自由な作曲活動が出来なかった時、就職先のポーランド放送の音楽部長ウワディスワフ・シュピルマン――あの『戦場のピアニスト』のシュピルマンである!――から「変名を使ってポップスを書いたほうがいい」とアドバイスを受けたルトスワフスキ。作曲家の名前を伏せてルトスワフスキの《交響曲第4番》を聴いたら、おそらくリスナーのほとんどはポスト・マーラーか、新ウィーン楽派の末裔の作品ではないかと錯覚するに違いない。それどころか、ところどころに旋律的な要素さえ顔をのぞかせる、こんな聴きごたえのある管弦楽曲が、わずか20年前に書かれていたとは到底信じがたい。

そのルトスワフスキに作曲を師事したこともあるサロネンは、なんとルトスワフスキの故郷を訪れるドキュメンタリー映画まで製作し、フィルハーモニア管の特設サイト(www.woven-words.co.uk)で気前良く無料公開している(英語のみ)。公演前の予習として、是非ともご覧になることをお勧めしたい。

LIVE INFORMATION
エサ=ペッカ・サロネン指揮
フィルハーモニア管弦楽団

2/7(木)19:00開演
曲目:ルトスワフスキ:交響曲第4番(1992)[ルトスワフスキ生誕100年記念]/ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調op.58/ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調op.92
出演:エサ=ペッカ・サロネン(指揮) レイフ・オヴェ・アンスネス(P) フィルハーモニア管弦楽団
会場:東京オペラシティ コンサートホール
http://www.operacity.jp/

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