NEWS & COLUMN ニュース/記事

Kurt Rosenwinkel『スター・オブ・ジュピター』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/12/26   14:00
ソース
intoxicate vol.101(2012年12月10日発行号)
テキスト
text:稲田利之(難波店)

ギターゴッド、ジャズの大気圏外へ

ギターのフレーズとユニゾンしながら漂うヴォーカルライン、精巧なメロディのモチーフが積み重ねられクライマックスへと達するギターのインプロヴィゼーション、ジャズギターのボキャブラリーを超えた斬新なコード感覚、そしてポリリズミックなグルーヴの織りなすハーモニー。スタンダードなジャズの枠には収まりきらなくなった現代のコンテンポラリーなジャズの楽曲の中で、ギターという楽器をどのようにサウンドさせるかという点では、カート・ローゼンウィンケルはこの10余年に渡って、その先陣をひた走ってきた。

彼自身がしばしば言及しているように、バド・パウエルやエルモ・ホープといったビバップ時代のピアニストやジョン・コルトレーン、そして彼曰く「コルトレーンのスタイルをギターに置き換えた先駆者」であるアラン・ホールズワースらは、彼のインスピレーションの源であった。一方で、90年代ヒップホップ・シーンのカリズマであったQティップとのコラボレーションは、Qティップの『Kamaal The Abstract』とカートの2003年作『Heartcore』に結実し、それ以降、ギタープレイのみならず、楽曲制作に新たな可能性を見いだした音楽家としての彼の流浪の旅は、行き着く先を見失ってしまったかのようにも見えた。

90年代後半から続いた盟友マーク・ターナー(ts)との蜜月は、2008年のライヴ盤『The Remedy』で頂点に達し、2005年の『Deep Song』ではブラッド・メルドーを、先述の『The Remedy』ではアーロン・ゴールドバーグを起用し、新たなピアニストにたどり着くまでにも数年の月日を要した。近年の彼のもっとも良き理解者であるエリック・レヴィス(b)と無限の可能性を秘めた若手ジャスティン・フォークナー(ds)という最強リズム隊、そして瞬間の閃きに歓喜の旋律を叩き込むピアニスト、アーロン・パークスに支えられ、明らかにカートの音楽は新たな次元に突入した。最新作『スター・オブ・ジュピター』に収録された全12曲は、桃源郷の入り口にさしかかった彼が見るジャズの未来に違いない。

LIVE  INFORMATION
『Kurt Rosenwinkel Quartet "Star of Jupiter" Japan Tour 2013』

3/12(火)梅田クラブ・クアトロ
3/14(木)ブルー・ノート名古屋
3/15(金)モーション・ブルー・ヨコハマ
3/16(土)草月ホール
http://www.songxjazz.com