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Beth Orton『Sugaring Season』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/01/15   12:28
ソース
intoxicate vol.101(2012年12月10日発行号)
テキスト
text:桑原シロー

プロデュースはタッカー・マーティン。ブライアン・ブレイドも参加する新作

ジム・オルークをプロデューサーに起用した『Comfort Of Strangers』以来ということは、6年ぶりになるのか。UKのシンガー・ソングライター、ベス・オートンの5枚目のオリジナル・アルバムは、アンタイからの移籍第一弾となる。レコーディングはポートランドで行われた模様で、プロデュースはタッカー・マーティンが担当。スフィアン・スティーヴンスやディセンバリスツなどを手がけたことで知られる彼は先ごろ、ビル・フリーゼルらと組む未来派ルーツ・ミュージック集団、フローラトーンで2作目『Floratone II』を出したばかりだ。そしてバックを固めるのは、ロブ・バーガー、ブライアン・ブレイド、セバスチャン・スタインバーグという充実の強力布陣。そこにマーク・リーボウやロブ・ムース、サム・アミドンにローラ・ヴェイアーズらによる味なサポートがふんだんに盛り付けられているのだから、これで最高のアメリカーナ・サウンドが聴こえてこなきゃ嘘だ。いや実際のところ、これまで以上にアーシーなフレーヴァーを放っていて、ブルージーなムードが魅力的に光る作品に仕上がっている。随所においてジャジーなフィーリングを醸し出しているリズム・セクションと、ベスのかすかに憂いを帯びたハスキー・ヴォイスとの絡みが、とにかく絶品の一言。さらに深みのある表現力を開花させており、サム・アミドンがコーラスを受け持つ《Poison Tree》などを聴いていると、いっそうサンディ・デニーに似てきたよなぁ、なんて感慨を抱いてしまったりもした。情けの深さを感じさせるブライアン・ブレイドのドラムに包まれて、やけにソウルフルな歌声を響かせるバラード《Something More Beautiful》もぜひ注目すべき。彼女がこの先どういう方向をめざすのか分からないが、ルーツ志向のフォーキー・アルバム路線ではこれが間違いなく最高峰に位置づけられるはず。ローラ・ギブソンの『La Grande』に代わって、今年の越冬用防寒着はこれでOKだな。

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