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OGRE YOU ASSHOLE

連載
360°
公開
2013/02/28   18:30
更新
2013/02/28   18:30
ソース
bounce 352号(2013年2月25日発行)
テキスト
インタヴュー・文/土田真弓


OGRE YOU ASSHOLEをきっかけに聴くリサイクル盤!



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「印象的なのは、『浮かれている人』の〈Twilight Edition〉に入ってる“バランス”のリミックス版ですね。(プロデューサーの)石原(洋)さんに〈客が2〜3人ぐらいしかいないバーみたいなところでスチャラカ・スチャラカやってる感じで演奏してください〉って言われて、みんなで〈うーん……まあ、やってみるか〉って(笑)」(出戸学、ギター/ヴォーカル:以下同)。

その結果、感情を大幅に削ぎ落としたような──だからこそのジェントルさを漂わせた新たな“バランス”が誕生。今回リリースされたOGRE YOU ASSHOLEのリアレンジ盤『confidential』の制作は、そこから始まったと言っていい。2010年の『浮かれている人』以降、次のオリジナル作との合間にセルフ・リミックス曲入りのアナログ盤を発表してきた彼ら。今作は、石原のアイデアを元にバンドがリテイクするという過程で再構築され、上述のEPに収録された4つの既発曲と、近作『homely』『100年後』の方向性に馴染むライヴ用のアレンジが施されたインディー期の楽曲、そしてここで初披露となる2曲の新アレンジ版から成るのだが、とりわけ初出の2曲の変貌ぶりが凄まじい。淡々としたリズムと歌に物悲しいマンドリンと奇妙な声ネタを差し挿むことで、どこかモンドな雰囲気を纏った“フラッグ”。そして“素敵な予感”では、不気味に蠢くベースラインが不穏な空気を創出するなか、サックスがヒステリックな悲鳴を上げ、その一方で生気を失った歌がゆらりと中空に浮かぶ。その極端なコントラストが、サイコ・ホラーまがいの得体の知れない恐怖感を煽る。

「“フラッグ”は、ドイツのDAFっぽくしよう、みたいな話から始まったんですけど、石原さんがそこにマンドリンを入れるって言い出して、僕らは〈ああ、そうですか〉と(笑)。歌は、普段は1オクターヴ上で歌ってるんですけど、ここでは1オクターヴ下で歌ってくれって言われて。あと“素敵な予感”は……今回は〈不吉な予感ヴァージョン〉ですね。原曲もそんなに素敵な予感はしないんですけど(笑)。作ってるときは……作ってるっていうよりも、壊してるっていうか……なんか、描いた絵を乱暴に消してる感じでした。そこが凶暴なイメージに繋がっていくんですけど、生臭くなくて、どっちかっていうとドライな怖さがありますね」。

バンドだけのアンサンブルにホーンやパーカッションを加えることで、ここ2作では独自のサイケデリックなAORサウンドを更新してきた4人。そして今回の全8曲を聴いて気付くのは、各アルバムのカラーの片鱗が、直前に発表されたリアレンジ曲での手法に表れているということだ。公開順に楽曲を辿ると、バンドがどのように自身の進化を促してきたか確認することができる。

「今回は、枠組みがいちばんない作品なのかもしれないですね。全体としてのコンセプトも禁じ手もないんで、実験的というか、石原さんがポッと出したアイデアをそこで試してみるっていう。そのときは何やってるのかわかんないこともあるんですけど、出来上がって聴いてみて、そこからまた時間が経ってバンドに血肉化される。それで次のアルバムに挑むっていうのがここ2〜3年の流れで。だから、ここではオリジナル・アルバムの一歩手前の、自分たちで事態を呑み込む前の状態のものを見せてるっていう感じですかね」。

となると、本作の“フラッグ”“素敵な予感”は今後の予兆になっている?

「今回の“素敵な予感”ほど振り切れたものをいままで作ったことがなかったんで、またひとつ幅が広がった感じはしますね。今後この方向でやっていくかどうかはわからないですけど」。



▼OGRE YOU ASSHOLEのリアレンジ・アルバム『confidential』(バップ)は、アヴァンギャル度 ★★★★★!

 

▼OGRE YOU ASSHOLEの近作を紹介。

左から、2010年のミニ・アルバム『浮かれている人』、2011年作『homely』、2012年作『100年後』(すべてバップ)