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JAZZ WEEK TOKYO 2013

ウェイン・ショーター/待望の新作『ウィズアウト・ア・ネット』を発表!

公開
2013/03/05   19:56
ソース
intoxicate vol.102(2013年2月20日発行号)
テキスト
文/田中カレン(作曲家)

今年80歳を迎えるショーターの待望の新譜『ウィズアウト・ア・ネット』がブルーノート・レコードからリリースされた。メンバーはダニロ・ペレス(ピアノ)、ジョン・パティトゥッチ(ベース)、ブライアン・ブレイド(ドラム)というおなじみのカルテットだ。

同レーベルからの新譜は、『Moto Grosso Feio』と『Odyssey of Iska』を録音した1970年以来、43年ぶりとなる。今回のリリースに合わせ、3月23日、24日 には「Jazz Week Tokyo 2013」(東急シアターオーブ)での来日公演が決定している。

ショーターはアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ (1959〜 )の後、マイルス・デイヴィスのクインテット (1964 〜 )で「黄金のクインテット」としてアコースティック・ジャズの頂点を築き、1971年に結成したウェザー・リポートではクロスオーヴァーの旗手として、時代の先端を行く音作りで一世を風靡した。グラミー賞受賞9回。80歳にしてジャズ界の巨星として最盛期を迎えているショーターは、現在も絶え間なく前進し続けている。

最近行われた米NPR(公共ラジオ局)によるインタヴューで、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、アート・ブレイキーといった偉大なプレイヤーから学んだこと、若い音楽家へ伝えたいことは何ですか? という質問に対し、興味深い答えをしている。

「彼等に共通の信条は、彼らの“ミュージシャンに好きにやらせてやる”、ということ。6年間マイルスと過ごしたが、音楽について語ったことは一度もなかった。リハーサルをしたこともなかった。今から考えると驚きだけどね。でも、どうしたか分かる? マイルスと『話すようにジャズを演奏しよう』ということになったんだ。ジャズは命令じゃないし、ジャズらしく聞こえなければならないわけでもない。私にとって“ジャズ”という言葉の意味は“やれるものならやってみろ(=I dare you)”。何かをぶち壊す挑戦の方がAを取るよりもずっと価値がある。音楽は予期しない何かを取り扱う。誰も予期できないことを取り扱う方法なんてわからない。未知のものをなんでリハーサルするんだろう…?」

『ウィズアウト・ア・ネット』は、2011年のウェイン・ショーター・カルテット欧州ツアーのライヴ録音を中心にした全9曲を収録。《ペガサス》だけはそれ以前に木管五重奏団のイマニ・ウィンズを迎えてロサンゼルスのウォルト・ディズニー・ホールで録音された。6曲はショーターの新作だ。《オービッツ》(マイルス・デイヴィスの『マイルス・スマイルズ』収録)と《プラザ・リアル》(ウェザー・リポート『プロセッション』収録)というショーター2作品は新たなヴァージョンとして生まれ変わり、《フライング・ダウン・トゥ・リオ》は1933年の映画『空中レヴュー時代(原題:Flying Down To Rio)』のテーマ曲からとられている。

全トラック、メンバー4人の名演奏とスリリングな超絶技巧が火花を散らし、絶妙なドライヴ感とリリシズムに酔いしれることができる。《スターリー・ナイト》では、抑制されたロマンティシズムが、クールでありながら情熱的なパッセージへと次第に変容して行く。《プラザ・リアル》では躍動感の中にメロディが自由自在に散りばめられて、ペレスのピアノのパルス、ブレイドの洗練されたドラムのポリリズムと見事に調和している。23分間の音によるポエム《ペガサス》はアルバムの中核でもあり、5人の奏者によるイマニ・ウィンズとともに絶妙な9重奏を聴かせてくれる。9人の名手が互いに競合しながら、個々と全体の自由を保ちつつ、一つの作品を形成して行く課程が見事だ。

2月9日にロサンゼルスでウェイン・ショーター・カルテット、エスペランサ・スポルディング、ヴィンス・メンドーサ指揮ロサンゼルス・フィルの公演を聴いた。スポルディングをフィーチャーした《Gaia》はオーケストラとの共演の世界初演で、ジャズというジャンルを超え、聴衆に深い感動を与えた。ショーターのサックスの音は、何者にも束縛されない自由自在な、大地に深く根ざした人間の魂の声にも聴こえ、 超越した孤高の境地に心から感動した。

ウェイン・ショーター・カルテット
feat.ジョン・パティトゥッチ、ダニロ・ペレス、ジョナサン・ピンソン

3/23(土)18:30開場/19:00開演
3/24(日)18:00開場/18:30開演
会場:渋谷ヒカリエ 東急シアターオーブ

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