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(第10回)京都シーンのヴェテラン、ドクロズとJB

連載
岡村詩野のガール・ポップ今昔裏街道
公開
2013/03/25   13:00
更新
2013/03/25   13:00
テキスト
文/岡村詩野


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ライター・岡村詩野が、時代を経てジワジワとその影響を根付かせていった(いくであろう)女性アーティストにフォーカスした連載! 第10回は京都シーンのヴェテラン、ドクロズとJBをご紹介



それにしても、京都を拠点に活動しているガールズ・バンド、ドクロズのニュー・アルバム『Epcot』(タワレコでは京都店/新宿店にて限定リリース)には驚かされました。約20年もの間、京都シーンを支えてきたドクロズが、こんなに軽やかでポップで、そしていかにも京都産らしいいなたさやユーモアを忘れない曲を聴かせるバンドに成長していたとは! 先頃東京で行なわれたアルバム発売記念ライヴ(シャムキャッツらも出演!)には筆者も足を運びましたが、トランペットのファンファンは残念ながら欠席だったものの(同じ日にくるりのライヴがあったからだそう)、あさこ、オヤビン、ヅマ、ミユキの4人による演奏は、レインコーツやシャグス、あるいはバングルスやゴーゴーズにも負けない愛らしさとスリルが満載で、さながらネジが緩んだりハンドルが曲がったまま走り出してしまった4台のスクーター・レースでも見ているようで痛快でした。ちなみに、ドラムのヅマが参加する〈シゼンカイノオキテ〉〈もけもけ〉という別バンドもおもしろいですよ。

そんなドクロズの新作には、カヴァー曲が1曲収録されています。“セブンゴッズ”というその曲のオリジナルは、知る人ぞ知る京都の女性デュオ、JB。ジェイムズ・ブラウンでもジェイムズ・ブレイクでもないこのJBは、ふちがみとふなとのヴォーカリスト、渕上純子(J)と、アーント・サリー~Lovejoyとキャリアを重ねてきたギタリスト/ヴォーカリストのbikke(B)による2人組です。2005年に最初のアルバム『ルリパキダンス』をF.M.N. Sound Factoryから発表、2010年に2作目『ソレユケ』をたぬへーレコードからリリース。ドクロズが取り上げた“セブンゴッズ”はこの2作目に収録されています。渕上もbikkeも、どこにも力の入っていない、風通しが良くて飄々とした歌を身上とする歌い手で、これまでにさまざまな現場でその軽やかな持ち味を発揮しているわけですが、なかでもJBはテンポを遅めに設定したようなアコースティック・ポップ。一聴するとスプーン一杯の幸せが広がるような牧歌的な歌世界、でも、スプーン一杯の毒もコッソリと混ぜたような危うさもある――それがJBなのです。2人のおっとりとした雰囲気がそのまま言葉に表れた日本語の歌詞には、ちょっと散文詩のような味わいもあります。

ドクロズがカヴァーした“セブンゴッズ”(七福神!)は、〈宝船〉〈商売繁盛〉〈金銀コトブキ〉などの単語が飛び出す、bikkeによるおめでたくて、クスっと笑えてしまう歌詞が印象的。それをドクロズはダイナミックで大らかなバンド・サウンドにアレンジしているわけですが、この見事なカヴァーを最初に聴いた時、京都のガール・ポップの系譜は確実に連鎖しているんだなあということを実感させられたものです。JBもそうですが、ドクロズもちょっとタメ気味と言うか、独特のユルいタイム感があります。例えば、bikkeはPhewらと共にアーント・サリーの一員としてシーンに登場した時から、ほんの少しズレてるかのようなぎこちなくもシャープなギターを弾いていました。ドクロズのミユキはそのbikkeのプレイを間違いなく受け継いでいると思うのです。

ドクロズのあさこいわく、今回取り上げた“セブンゴッズ”はJBがあまりに好きすぎるので懇願して認めてもらった〈公式カヴァー〉だとか(笑)。そうそう、ドクロズの新作にJBのカヴァーが収録されていると知った山本精一さんが、エラく興奮されてCDを手にしていたこともこっそり書き添えておきましょうかね。