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映画『みんなで一緒に暮らしたら』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/04/25   15:39
ソース
intoxicate vol.103(2013年4月20日発行号)
テキスト
text:高野直人(秋葉原店)

「月並み」な女性役を演じるジェーン・フォンダは、「月並み」ではない!

邦題の『みんなで一緒に暮らしたら』。さてこの後に続く言葉はどのような言葉だろうか?恐らく、やっぱり共同生活って大変だよ、というものと、色々あるけど楽しいよ、というネガティヴな言葉とポジティヴな言葉が同時に挙がってくるものと予想される。そして、実際この映画も、その両面が描かれている。だが、この映画の面白い点は、「みんなで一緒に暮らしたら」という部分なのだ。

パリの郊外を舞台に、昔から誕生日を一緒に祝ってきた平均年齢75歳の友人5人(2組の夫婦と1人の独身男性)が一緒に暮らすという物語である。一緒に暮らす発端になるのは、独身男性が心臓発作で倒れて、息子に強制的に老人ホームに入れられるという「事件」である。仲間たちは、彼を「救う」べく共同生活を始める。共同生活において、仲間たちの間で諍いも起こるが、その直接の原因は共同生活にはない。同様に、楽しいという部分も共同生活に直接的な原因があるというものでも実はない。つまり、この映画は共同生活を描きながらも、リアルな共同生活を映し出す映画では実はない。


死を宣告され最期の準備をする者、物忘れが激しくなった者、バイアグラを飲んで女性を追いかける者、政治活動に年齢制限はないと憤る者、孫が自宅に寄り付くようにプールの設営に本気で取り組んでいる者。彼らの悩みは、あまりに人間的で、自身の最期を準備する者ですら、「月並み」でしかない。私たちはどうしようもなく「月並み」を生きている。そして「月並み」を生きていくことはそれだけですごく大変で大切でもある。その大変さと大切さは、この映画のラストに目に見える形で現れる。この時、リアルな共同生活という形態に限定されない「一緒に暮らす」ということ真の意味が炙り出されるだろう。ユーモラスでもあり、哀しくもあるその光景に、何を思うか、各自確認されたい。

監督は70年生まれのステファン・ロブラン。若いながら、5年越しの企画を執念で映像化。特に卓越したユーモア感覚が素晴らしい。老俳優たちもそれぞれ好演しているが、中でも40年ぶりのフランス映画出演を果たしたジェーン・フォンダが素晴らしい!ジェーン・フォンダが「月並み」な女性役を演じるということの「月並み」でない事態!これは間違いなく彼女の晩年の代表作となるだろう。という意味でも、必見である。「一緒に暮らす」人と是非!

©LES PRODUCTIONS CINEMATOGRAPHIQUES DE LA BUTTE MONTMARTRE/ROMMWL FILM/MANNY FILMS/STUDIO 37/HOME RUN PICTURES

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