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リクエスト・ライブラリー第6弾

カテゴリ
EXTRA-PICK UP
公開
2013/04/30   13:07
ソース
intoxicate vol.103(2013年4月20日発行号)
テキスト
text:吉川明利(映画案内人)

映画『殺したいほど愛されて』
©2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

リクエストしたら、本当に発売になるってよ!(桐島風に)
──リクエスト・ライブラリー第6弾、4ヶ月連続リリース開始

「映画史に燦然と輝く不朽の名作!」的な宣伝文句のように、大袈裟に語られることはないですが、それぞれの映画ファンの記憶の中で生き続ける作品を、ちゃんと発売してくれるハリウッドメジャーは20世紀フォックスだけになってしまったようです。これは要するに映画に対する愛情の問題なのですね。冷静にビジネスとして捉えたなら、無理して発売しても採算がとれない作品もあるでしょう。しかし、お客様の要望があり、権利的に問題がないのであればリクエストにお応えしようという姿勢こそが、作品に対する「愛」なのですよ。これを感謝しない映画ファンはいないでしょう。そして無事、今年もリクエスト・ライブラリー(なんと第6弾!)のラインナップが発表となりました。何気なく眺めていると、なんと以前にこの誌上で勝手に「お願い」したタイトルがあるじゃありませんか! 嬉しい、本当に発売してくれるのですね!

その映画のタイトルとは、6月5日発売の『殺したいほど愛されて』。20世紀フォックス配給で1984年に公開された作品です。若く美しい妻をもった世界的に有名な指揮者の男が嫉妬の妄想に駆られ、妻を殺そうと見当違いの殺人計画をするというコメディです。主演はダドリー・ムーア。そう、70年代後半から80年代半ばまでの短い期間ですが、ハリウッド・コメディには、確実に「ダドリー・ムーアの時代」があった事を忘れてはいけません。78年の『ファール・プレイ』の主役はチェビー・チェイスとゴルディ・ホーンですが、誰しも映画の後半でのダドリーに目を奪われてしまったでしょう。まさに「場面をさらうってこういうことなんだ」と思い知ったのでした。79年の『10テン』は、タイトル通りの10点満点の(演技はともかく)美女、ボー・デレクと共演して、そして自身はアカデミー主演男優賞のノミネート、名優ジョン・ギールグットに助演男優賞をもたらした81年のヒット作『ミスター・アーサー』(クリストファー・クロス」の主題歌も有名ですね)といった具合にどれも面白い作品ばかりですが、やはり集大成と言えるのが、この『殺したいほど~』でしょう。指揮者という役も、実際にピアニストでもあり指揮もするダドリーにはぴったりです。

もうひとつのこの映画の特徴はリメイクだということです。オリジナルは、1948年に作られたプレストン・スタージェス監督の『殺人幻想曲』です。他に、この時代のリメイク作品としては、同じフォックス作品に『メル・ブルックスの大脱走』(1983)がありますね。オリジナルは、あのコメディの大家エルンスト・ルビッチの『生きるべきか、死ぬべきか』(原題は一緒)です。共通して言えることは、二作とも映画史に名を残している監督の作品で、それを「どう形を変えたら成功するか」というキチンとしたコンセプトでチャレンジしていることです。ここが近年のハリウッド映画の、リメイクすることの意味が全く分からない、無節操な製作姿勢とは違う点でしょう。特に『殺したいほど~』のダドリーの嫉妬と妄想の演技はオリジナルのレックス・ハリスンより、ずっと役柄にはハマっているではありませんか!

そして、今回のリクエスト・ライブラリーのラインナップで最大の注目作品であり、隠れた名作こそが『ソルジャー・ボーイ』(6月5日発売)です。この映画が描いているのは社会復帰が出来ないベトナム帰還兵の悲劇です。そうです、この後続々登場してくる『タクシー・ドライバー』(1976)『ローリング・サンダー』(1977)『ディア・ハンター』(1978)『ランボー』(1982)などのベトナム戦争後遺症ものの先駆者的存在なのです。4人のベトナム帰還兵の、仲間同志で牧場をはじめようという、ささやかな夢さえも壊してしまう戦争後遺症を、1972年という最も早い段階(ベトナム戦争は実質1975年まで続いていた)で暴き出している衝撃作です。ジョー・ドン・ベイカー(『ウォーキング・トール』!)以外は無名の俳優ばかりなので、日本でもアート・シアター系でひっそり公開され、知る人ぞ知る必見の映画なのです!原題名は『WELCOME HOME, SOLDIER BOYS』。なんとも皮肉なタイトルですよね…。

また、4月24日発売分の作品を見渡せば、1975年製作のコメディ『ローヤル・フラッシュ』があります。主演は『時計じかけのオレンジ』で知られるマルコム・マクダウェル。『ボクサー』(1970)は数あるボクシング映画の中で、今まであまり語られなかった黒人ボクサーの物語ですが『サウンダー』というもう一つの黒人映画の傑作を監督しているマーティン・リットの作品です。あのダース・ベイダーの声で知られるジェームズ・アール・ジョーンズ主演です。『デス・ハント』(1981)は、チャールズ・ブロンソン、『白熱』(1973)は、バート・レイノルズ主演、というように今回のリクエスト・ライブラリーの特色は、硬軟混在70年代男優のオンパレード!こよなく70年代を愛する者にとっては、堪えられませんよ。おっと、女優で忘れちゃいけないのが『ルナ』のジル・クレイバーグ、彼女は70年代女優の代表でした!

2013年4月発売タイトル

 

 

2013年6月発売タイトル

 

 

2013年7月発売タイトル

 

2013年8月発売タイトル