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(最終回)チャン・ギハと顔たちの挑戦は続く

連載
長谷川陽平のソウルで勝手に生きてます。
公開
2013/05/09   16:30
更新
2013/05/09   16:30
テキスト
文/長谷川陽平


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チャン・ギハと顔たちでギタリスト/プロデューサーを務める日本人メンバー・長谷川陽平が、ソウルは弘大(ホンデ)に集まるミュージシャンの生態に迫る連載! 涙の最終回!!



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顔たち撮影中



いよいよ、最終回となってしまいました。まずはお礼からスタートしたいと思います。この1年間、本当にありがとうございました!!

さて、私も韓国音楽に関わりはじめてから今年で18年目になるわけですが、その間に数々の大きな変化を見てきました。その変化というのはさまざまなのですが、何より外国人アーティストのライヴが多くなったというのが、もっとも印象的です。夏になればフェスも多く開催され、コアな音楽リスナーだけでなく、〈夏の一大イヴェント〉として多様な人々が参加し、フェスを楽しむようになりました。また、単発でも欧米のバンドが多数来るようになり、昔は年に2、3組来る程度だったのが、いまやひと月に何組も……という信じられない状況になってきております。

アーティストもいわゆる有名どころだけではなく、最近だとグライムスやダーティ・ビーチズといったインディー系のアクトも小さなハコではありますがライヴを行い、そこに来るような感度の鋭いミュージシャンやファンもかなり増えてきたのです。これはあきらかにリスナーやミュージシャンが聴く音楽の幅が広がってきたということでしょう。

インターネットの発達や、以前より海外に行きやすくなってから、本当に変わってきたのです。ひと昔前までは日本に行くのもビザを取って行かなければならないという難しい状況でしたから……。



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顔たちレコーディング中



それを踏まえ、前回もチラッと書いたように最終回らしく〈世界に羽ばたくチャン・ギハと顔たち〉ということで、われわれに起きた〈事件〉を書きたいと思います。それはボソッと言った私の一言から始まったのです。

〈テレヴィジョンが日本に来るそうだよ! まさか……ソウルには呼べないよね(笑)?〉

私は苦笑いをされるかと思い、ニヤニヤと冗談だとわかるような感じで言ったのですが、マネージャーとギハは至って真面目に〈できますかね……ちょっと当たってみます〉と。おいおい~!と、逆にその場で私が苦笑いをするハメになってしまいましたが(笑)。

それから何の音沙汰もないまましばらく過ごし、ある日私が〈どうするんよ、テレヴィジョン。日本に観に行くん? 売り切れたりしているらしいから、観に行くなら押さえるけど〉とギハに言ったところ、〈……何言ってるんですか、うちらとテレヴィジョン、5月にジョイント・ライヴをやることになったの聞いてませんか?〉と。聞いてないです……。



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プロモーターの方やマネージャーが動き、本当にいっしょにライヴをやることになったのです! ライヴのタイトルは〈顔たちとお客さんたち〉。その第1弾のお客さんがテレヴィジョンとなるわけです。もちろん、これはシリーズ化して今後も続けていくつもりで、われわれのルーツ/影響を受けたアーティストを呼んで共演しよう!という、いささか無茶な連続企画を立ててしまったのです。

自分たち本意の企画かもしれません。しかし、韓国音楽にこれからさらに必要になってくる多様性を追求するという意味でもあるのです。われわれの人生を変えてしまったような、韓国ではあまり知られていなくともロックの歴史において重要なバンドを知ってもらいたいがための……いや、何よりも自分たちが盛り上がり、良い音楽を作るための企画だと言い切ってしまいます、ここで。

自分自身、韓国を通してここまで人生が変わるとは思いませんでした。もちろん音楽を続けてきたからかもしれませんが、ただ続けてきたわけではありません。日本人、いやアジア人として、韓国で続けてきたわけで。悩んだ時期もあったし、正直欧米にはいまでも憧れがあります。でももしかして、20年前のイギリス旅行の時、そのままロンドンに住みたいと思って渡英していたら、また違う人生になっていたでしょう。〈急がば回れ〉とは言いますが、まさか回った結果がこんな形で出るとは、夢にも思わなかったわけです。

そして、そのロンドンへの思いが私の心のどこかにあったのでしょうか……もうひとつ〈急がば回れ〉的な感覚で実現することになったことがあります。6月にロンドンで顔たちのライヴをやることになりました!



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顔たちレコーディング中



すべては小さな機会から始まったものです。ここ韓国に18年もいようなんて思ってもいませんでした。ちょっと勇気を振り絞り、ちょっとだけ飛び出してみれば見えてくるんです。こうしてタワレコのウェブでコラムを書かせてもらうことひとつを取っても、僕にとっては信じられないことでした。信じられないことの連続は、本当に些細なことから始まっています。これからもアジアのなかの韓国・ソウルで〈勝手に生きていく〉のみでありますが……そんな勝手な人生が楽しくなるような瞬間を、これからも作っていきたいなあ、感じていきたいなあと思っているわけです。こんな勝手な人間ですが、これからも応援よろしくお願いいたします!

本当にありがとうございました!!



PROFILE/長谷川陽平



韓国のバンド、チャン・ギハと顔たちのギタリスト兼プロデューサー。95年に韓国へ移住し、トゥゴウン・カムジャやサヌリム、ファン・シネ・バンドなどで活動。現在は他にもミミ・シスターズや美男美女の〈美男〉ギタリストを務めたり、若手パンク・バンドのLook & Listenのプロデュースなども手掛けている。いつもここでつぶやいてます→https://twitter.com/lghopper_Yohei