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ロリン・マゼール&ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団『ブルックナー:交響曲第3番』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/05/09   20:27
ソース
intoxicate vol.103(2013年4月20日発行号)
テキスト
text:谷川和繁(タワーレコード本社)

ミュンヘン・フィルと共に、新たなる挑戦へ

マゼールとミュンヘン・フィルの来日公演もこの号が並ぶ頃には終わっているが、彼らの演奏を楽しんだファンも多いことだろう。2012/13年シーズンからミュンヘン・フィルの音楽監督に就任したマゼール。82歳になっての就任、その精力的な活動は多くのファンの注目を集めているのではないだろうか。マゼールのブルックナーといえば、何よりも首席指揮者を務めていたバイエルン放送響との全交響曲演奏録音であろう。あの圧倒的な演奏でマゼールのブルックナーを再認識したファンも多いのだろうが、彼のブルックナーは、1967年の第3番(ベルリン放送響)にはじまり、74年の第5番(VPO)、そして88年・89年の第7番&第8番(BPO)。さらには96年バイエルン放送響との第8番の映像に、99年の全集とこれまで、ほぼ10年ごとに録音を行って来ている。ここ数年は、第3番を積極的に取り上げていて、このミュンヘン・フィルとはもちろん、ウィーン・フィルとのロンドン公演にもプログラムにあがっていた。それだけに今回の就任披露演奏会後に取り上げたこの演奏での両者の意気込みには、並々ならぬものがあっただろう。所謂ブルックナー指揮者が指揮台にあがってきたミュンヘン・フィルにはこれまでの伝統とともに新たな演奏への挑戦が積み重ねられ、マゼールがそこに1ページを付け加えた。さてこの演奏だが、第3稿を基本に手を加えた部分がありディテールへのこだわりと巨大建築を築き上げたような圧巻のブルックナーといえる。自由自在にオーケストラを操り、緩急の巧みさ、静謐さと咆哮、冒頭から最後の一音までマゼールの風味が随所に感じられ、聴き所は満載。一瞬たりともスキをみせず弛緩することのないアンサンブル(重厚な弦、彩りを添える木管、存在感を示す金管)はオーケストラの底力とそれを引き出したマゼールの手腕に感服、紛れのない第3番の快演が生まれたといえるだろう。

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