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カレン・Oのカオスな魅力が大爆発したヤー・ヤー・ヤーズの新作

連載
久保憲司のロック千夜一夜
公開
2013/05/10   17:00
更新
2013/05/10   17:00
テキスト
文/久保憲司


ロック・フォトグラファーとして活躍、さらにロック・ジャーナリストとしての顔も持つ〈現場の人〉久保憲司氏が、ロック名盤を自身の体験と共に振り返るコラム。今回は、ヤー・ヤー・ヤーズの4年ぶりのニュー・アルバム『Mosquito』について。そこには、カオスな魅力を大爆発させたフロントウーマン、カレン・Oの姿があって――。



前作『It's Blitz!』はキーボードが全面に出ていて個人的にはちょっと外した感じがしましたが、ヤー・ヤー・ヤーズの4作目『Mosquito』は素晴らしい。

『It's Blitz!』は卵を潰すジャケットもオシャレで、1曲目の“Zero”とか良い曲だったのですが、その前の名盤『Show Your Bones』をもっと完璧なポップ・アルバムにしようとしたことが、ヤー・ヤー・ヤーズというか、カレン・Oの持つカオスな魅力を押さえてしまっているような気がしました。

『Mosquito』はカレンちゃんに好きなことをやらせていて、彼女のカオスが大爆発という感じ。これが、聴いていて大変気持ちが良いのです。カオス全開なのに、『It's Blitz!』よりも開かれたアルバムに仕上がっているのが不思議なんですが、カレンちゃんというか、女性というのはこういう混沌としたアートのほうがポップさを生んでしまうのかな、と思ってしまいます。いまの時代が、こういう音をポップに感じさせてしまうのかもしれませんが。きゃりーぱみゅぱみゅやPerfumeとはまた違って、どちらかというと、草間彌生のポップさに近さを感じます。

こういうカオスって、男がやるとウザイんだけど、女性がやると神懸かって良いんですよね。パティ・スミスとか卑弥呼です。卑弥呼はアーティストじゃないか。でも、なんとなくわかるでしょう。日本のアーティストで言うと戸川純ですか。

こういう音に行き着いた経緯としては、フレーミング・リップスの『Embryonic』でカレンちゃんが2曲歌ったことにあるのかなと思うのですが、どうでしょう。歌ってはいませんが、“I Can Be A Frog”はカレンちゃんが携帯越しに動物の鳴き声をモノマネするというもので、エロティックで良かったです。

『Mosquito』は『Fever To Tell』や『Show Your Bones』にあったスージー・アンド・ザ・バンシーズのようなゴスな雰囲気は薄れてしまいましたが、現在のフレーミング・リップスのサイケ感が良い具合でカレンちゃんに絡み付いています。今作で完全復活したヤー・ヤー・ヤーズらしさにひと安心です。

でも、最後に一言。カレンちゃん、金髪にはしなくてもよかったかなと思います。イメージ・チェンジをやろうとするところは偉いと思いますが。カレンちゃん、がんばれ!