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(第6回)見てみたい景色

連載
皿えもん
公開
2013/05/20   13:30
更新
2013/05/20   13:30
テキスト
文/倉内太


アーティストが各テーマに沿ったお皿(CD)を紹介する連載! 倉内太が、愛しているからこそ言いたくなる〈こいつバカだー〉盤、聴くと爆笑してしまう盤を紹介します! なんとなく鬱々した時、飽き飽きした時、笑えなくなった時にどうぞ!



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友部正人 『Speak Japanese, American』 ミディ



今日はやらなきゃいけないことが幾つかあるのですが、いまボーッとしていて何となく始められない。
まずは腰を動かしてCDの停止ボタンを押して、
洗濯物を入れて伸びてる爪を切って、
原稿を書かなければ締め切りに間に合わないのですが、
どうもずっしりリラックスしてしまっていて、
延々とリピートされている『Speak Japanese, American』を止めることが億劫で仕方ありません。

夜はまだ少し冷えるからズボンもはかなきゃいけない。
風邪をひいてしまったら大変です。

風邪をひくと身体は怠くなり、
ちょうど右手に里芋をひとつ、左手に里芋ひとつぶん重たくなる身体。
自分の身体が人形のように感じられ、手を動かすというよりは操作するといった様子。
ああ、僕は風邪をひいてしまったんだなあ❤

『Speak Japanese, American』
友部正人さん、2005年発表の20枚目のアルバム。
今日はこのアルバムを聴いています。

このアルバムの曲でも風邪をひいたときのリラックスした部屋の風景が描かれています。
“ニレはELM”という曲のこちらの歌詞↓

久しぶりに咳のでる風邪をひいた
子供のころ咳ばかりしていたのを思い出す
犬がほえるように咳をした
言葉は何も思いつかなかった

明日これが三回になったら
きっと風邪は悪くなっているのだ
みぞれは激しく窓ガラスをたたく
ジャンゴ・ラインハルトのギターと共演している

ニレはELM カンゾウはLICORICE
ユーカリの葉っぱ レモンの皮
ぼくはひとりお湯を沸かして
咳に効くというお茶を飲む

このアルバムを聴いていると、じっとりと頭の中に汗。
楽器のような言葉に集中して、身体が温かくなる気がする。
部屋にあるただのシミも意味ありげに見えてきて、机の汚れにもセンスを発見。

部屋で過ごす時の風景、繰り返し変わる季節、
鎌倉の風景、外を歩くとある何か、
奇妙なものとの出会い、日本の分かりにくい形、友達が亡くなる風景。
言葉は作者が見たものをそのまま見せてはくれませんが、
僕の暑い頭はムシムシと幾つもの景色を感じます。

こんな音楽があるなら。
家の中にいてこんなに楽しいなら、ずっと家に居れば良さそうだけど、
こんなに楽しい言葉の羅列を作れる景色があるなら、
僕も直接見てみたい――そんな気持ち。

でも今日は原稿を書かなければいけないので外には出られませんね。
よし何を書こうかな。
読んでくれてありがとう、また書きます♪



PROFILE/倉内太



83年、埼玉生まれのシンガー・ソングライター。2005年よりバンド活動を開始。2008年に倉庫内作業員のアルバイトに採用されたことがきっかけとなって意欲的に曲作りを始め、弾き語りライヴも行うようになる。2009年に自主制作でファースト・アルバム『倉内太と彼のクラスメイト』をリリース。2012年5月に倉内太&ネイティブギターを結成し、バンドでのライヴ活動もスタート。2012年9月に店舗限定でシングル『LIKE A RHYTHM GUITAR』を、11月に初の全国流通盤となるアルバム『くりかえして そうなる』を発表した。そして5月29日にニュー・アルバム『刺繍』(DECKREC)をリリース! また5月24日(金)は下北沢440にて〈夢中大戦争シモキタ死闘編~Song is No.1 vs MME vol.17~〉に出演するほか、ライヴの予定も続々と決定しています。詳しくはこちらのサイトでチェック!



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