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監督・脚本:伊藤匡史 原作:道尾秀介 『カラスの親指』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/05/28   16:29
ソース
intoxicate vol.103(2013年4月20日発行号)
テキスト
text:大石昌稔(新宿店)

こんな詐欺師になら騙されてみたい!? どこまで見破れる?

昨年、ヨコハマ映画祭、ブルーリボン賞、日本アカデミー賞において最優秀主演男優賞を総なめにした阿部寛主演の最新作。直木賞受賞作家、道尾秀介の原作を元に、詐欺師という難しい役どころを演じている。

それにしても、阿部寛という俳優、もはや名優の域に達しているのではないだろうか。1980年代後期から多くの映画に主演している彼だが、近年の活躍ぶりには目を見張るものがある。これは、あくまで個人的な意見だが、現在活躍中の俳優の中でも、台詞で全てを説明するのではなく、表情で語ることの出来る数少ない存在。そんな、彼が詐欺師という役を演じるのだから相性抜群である。

また脇を固める共演陣も、村上ショージ、石原さとみ、能年玲奈、小柳 友と個性的な面々が揃っている。中でも、相棒テツを演じる村上ショージが、よしもとで鍛えられたその芸風をTVでのイメージのまま、映画俳優として上手く昇華している。

あらすじは、悲しい過去を引きずったまま詐欺師として暮らしているタケ(阿部寛)と新米詐欺師テツ(村上ショージ)の元にひょんなことから転がり込んだ姉妹(石原さとみ、能年玲奈)と姉の彼氏であるノッポ(小柳友)。彼らもタケと同様、悲しい過去を抱えたまま日々を過ごしていた。そんな、運命共同体とも言える彼らにタケが過去に起こした、とある事件がもとで始まる災難を人を騙す天才である詐欺師がどのように解決するのか?

多くの伏線を思いもつかぬ方法で回収する巧みな脚本と演出もさることながら、この映画の魅力は、なんと言っても観ているこちらも騙される面白さにつきる。ネタバレになってしまうので多くは言えないが、私自身、骨董屋でのやりとりには、面白いを通り越して、なるほどとすら思ってしまった。そして、ラスト20分の醍醐味。この映画のタイトルである『カラスの親指』とは一体何のことか。騙されたと思って、観てみるのもいいのではないか。