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監督:トム・フーパー 原作:ヴィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』 

公開
2013/06/25   13:22
ソース
intoxicate vol.104(2013年6月20日発行号)
テキスト
text:吉川明利(映画案内人)

本年度一番の話題作! お気に入りのシーンを何度も観たくなる美しさ

1985年にロンドンで幕を開け、その後、全世界で上演されたミュージカル『レ・ミゼラブル』が東京、日比谷の帝国劇場で上演されたのが87年のこと。ジャン・バルジャンとジャベール役は滝田栄と鹿賀丈史のダブルキャストという異例の試みが大きな話題になった。それから四半世紀の時を経て、遂に映画化が実現、その出来はアカデミー賞の助演女優賞をはじめ、3部門獲得という結果が示すとおり見事なものになった。さらに特筆すべきは日本での興行の大成功だ。大きなヒットが望めないミュージカル映画という定説を覆し、なんと58億を越す興行収入という近年の洋画では有り得ない大ヒットになった。美しい楽曲の数々と人間讃歌の物語の普遍性が、多くの女性客リピーターを産んだのだった。

この映画を成功に導いた立役者は、何と言っても舞台の製作者でもあるプロデューサーのキャメロン・マッキントッシュだろう。舞台と同じであるべき部分と、映画でしか出来ない部分を融合させられたのは、「レミゼ」を知り尽くした男のならではの技だろう。舞台と同じ事、それは出演者の歌唱と演技の一体化だ。普通ミュージカル映画は録音を先にし、その音に合わせた演技をするが、この映画は実際にスタジオで役者が感情を入れ、歌いながらの演技である。次に映像はその表情をアップで捉えるという、映画ならではの手法が力を発揮する。この舞台では無理なクローズ・アップの力があったからこそ、アン・ハサウェイが熱唱する《夢やぶれて》の場面が、より魅力的なものになったと言えるだろう。

唯一、注文を付ける点があるとすれば画面サイズ。世界の映画史には、必ず作品の風格に適した画面サイズというものが存在する。このビスタサイズはあまりにも映像のスケールに対しては窮屈に感じる。ファーストシーンとラストシーンにあれだけのスペクタクル場面を用意したのだから、何とかシネマスコープサイズで作ってほしかったのである。まぁ、それだけ舞台も含めたこのミュージカルが大好きだというわけですよ。

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