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Alexandre Andres『Macaxeira Fields』

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o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/06/27   16:42
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text:ケペル木村(MPB/中南米音楽)

ミナスの森で芸術が爆発か。21世紀の「街角クラブ」はこんなに凄い。

このアルバムの主人公アレシャンドリ・アンドレスは、1989年10月に来日公演を果たしたミナス(ブラジル南東部)の独創的音楽集団=グルーポ・ウアクチ(UAKTI)のメンバーで主に管楽器を担当するアルトゥール・アンドレの息子さん。ウアクチは1980年ミルトン・ナシメントの尽力によりアルバム・デビューを果たし、ミルトンの諸作品やミナス系アーティストの作品、さらにはポール・サイモンやマンハッタン・トランスファーのアルバムにも参加し、一時は現代音楽家のフィリップ・グラスの事務所に所属していたこともある。ごく最近ビートルズのカバー集をリリースしたばかりでもある。アルトゥール・アンドレはフルートの名手でアカデミックな音楽教育を受けて来た才人だ。母親のヘジーナ・アマラウはピアニストで歌手でもあり、この夫婦は何枚かの共演アルバムもリリースしている。

アレシャンドリが生まれたのは父親が来日した翌年の1990年3月。現在23歳で伸び盛りの年齢だ。このセカンド・アルバムではミルトンやトニーニョ・オルタ、ロー・ボルジェスやベト・ゲヂスら「街角クラブ」(クルビ・ダ・エスキーナ)の面々が作り上げた「ミナス・サウンド」をベースに、さらにアレシャンドリやプロデューサーでもあるアンドレ・メマーリらの音楽性が加わり、少しクラシカルな世界を描き出している。ミナス・ジェライス州にはバロック様式の影響が色濃く残っており、それは美術や建築のみならず音楽にも表れているが、アレシャンドリの音楽からはその要素を感じとることが出来る。ブラジルはポピュラー音楽とクラシック音楽の境目がない国だといわれるが、アレシャンドリの音楽はまさにその通り。それをここまで具現化出来たのはアレシャンドレが育った音楽的な環境と彼らの世代だからこそだろう。ミナス・ジェライス地方が持つ雄大で清冽な自然環境がそのまま音楽になったような、これ以上ない美しいメロディと豊穣なハーモニーが味わえる素晴らしい音楽だ

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