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竹澤恭子

公開
2013/07/02   12:58
ソース
intoxicate vol.104(2013年6月20日発行号)
テキスト
text:渡辺謙太郎(音楽ジャーナリスト)

日本で13年振りに演奏される「スペイン交響曲」に期待高まる!

1999年のリニューアルを機に、魅力的な演奏家と東京都交響楽団が共演する「響の森」コンサートを行っている東京文化会館。毎回、楽しく意欲的なプログラムを企画しているこのシリーズも早いもので33回目を迎える。「ダンス・ダンス・ダンス」と銘打った今回のゲストは、指揮者の広上淳一とヴァイオリニストの竹澤恭子。2人の注目の共演作品には、19世紀スペインの作曲家ラロの代表作「スペイン交響曲」が選ばれた。

1874年に書かれた本作は、ラロが残した3つのヴァイオリン協奏曲の第2番にあたる。交響曲と名付けられているが、ヴァイオリン・ソロと管弦楽が対等に掛け合うことから、紛れもない協奏曲の体裁をなしている。全体は5楽章構成で、スペイン風の甘美でエキゾティックな楽想が絶品。ヴァイオリンのソロ・パートには、初演者を務めた名手パブロ・サラサーテを想定して書かれた超絶技巧が横溢しているのも特長だ。

あと、演奏方法に関して。かつては初演に従って第3楽章をカットして演奏する習慣があった。だが、20世紀後半にユーディ・メニューインらが全曲演奏や全曲録音に着手したことで、現在はカットなしが主流になっている。

第1楽章の華々しい開始と展開、第2楽章の官能と情緒、第3楽章の憂いを帯びた間奏曲、第4楽章の郷愁、そして第5楽章の大団円…。そんなロマンティシズムに満ちた傑作協奏曲は、濃厚で艶のある演奏で知られる竹澤にぴったりな好プログラムだ! 日本で演奏するのは意外にも13年ぶりで、前回は亡きガリー・ベルティーニが指揮する都響だった。ベルティーニも今回の広上も、鮮烈で、情熱的で、献身的な音楽作りを旨とする指揮者。さらにオケも同じなので、彼女がこの13年に積み重ねてきた洗練や円熟をはっきりとした形で味わえそうだ。

また、かねてからこうした民族色豊かな作品を得意とする竹澤は、あるインタヴューの中で次のように語っている。

「民族音楽は〈人間の生活〉の中から生まれたものだからでしょうか…(中略)。〈生への力強さ〉といったものを感じます。それを感じながら弾くのが自分には合っているのでしょうね」

1986年のインディアナポリス国際コンクールで優勝を飾って以来、四半世紀以上にわたって世界の第一線で活躍し続けている竹澤。それぞれの土地の空気を全身で感じながら、共演者との瞬間、瞬間の対話を大切にしてきた彼女のひとつの回答が、いま目前にある。

写真©Tetsuro Takai

LIVE  INFORMATION
『東京文化会館《響の森》vol.33「ダンス・ダンス・ダンス」』  

7/31(水)19:00開演
出演:広上淳一(指揮) 竹澤恭子(vn) 東京都交響楽団
曲目:バルトーク:ルーマニア民俗舞曲 (管弦楽版)
ラロ:ヴァイオリン協奏曲第2番「スペイン交響曲」
ブラームス:ハンガリー舞曲集 (全21曲)
会場:東京文化会館 大ホール

http://www.t-bunka.jp/

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