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マキシム・ヴェンゲーロフ『来日記念SHM-CD5タイトル』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/07/22   14:30
ソース
intoxicate vol.104(2013年6月20日発行号)
テキスト
text:渡辺謙太郎(音楽ジャーナリスト)

90年代の名盤を、音質のクオリティをあげて再発売

昨秋、8年ぶりの来日リサイタルで、右肩故障からの完全復活を印象づけた現代最高峰のヴァイオリニスト、マキシム・ヴェンゲーロフ。去る6月前半に行われた2年連続の来日公演『ヴェンゲーロフ・フェスティバル2013』では、3夜に渡って協奏曲、リサイタル、弾き振りを披露。「復活」を超えた「進化」をまざまざと見せつけてくれた。

この祝祭に合わせてワーナーからリリースされたのが、彼が1990年代に残した名盤5枚のSHM-CD。いずれも音色の透明度が格段に増していて、マスタークオリティに限りなく近い高音質を楽しめる。各々の聴きどころを以下に掻い摘んでご紹介しよう。

93年録音の『ブルッフ(第1番)&メンデルスゾーン協奏曲集』は、マズア&ゲヴァントハウス管の大音響にも負けない、雄弁で艶のある表現が圧巻。

95年録音の『チャイコフスキー&グラズノフ協奏曲集』は、若々しくしなやかな歌い回しでストレートに押し切った秀演。アバド&ベルリン・フィルの好サポートも光る。

97〜8年の録音 『ブラームス協奏曲&ソナタ第3番』は、バレンボイムが指揮と伴奏を兼務。いずれも天才肌同士ならではの丁々発止だが、特に前者はライヴ録音ということもあり、とにかく熱い!

91~2年録音の『ベートーヴェン・ソナタ集』は、《春》&《クロイツェル》の2大傑作を収録。当時まだ10代だった彼は、終始鋭くダイナミックな演奏を聴かせてくれる。また、前者はゴラン、後者はマルコヴィッチと、伴奏者を変えることで両曲を明快に歌い分けているのも流石。

そして、パガニーニの協奏曲第1番、サン=サーンス《序奏とロンド・カプリチオーソ》&《ハバネラ》、ワックスマン《カルメン幻想曲》を収めた91年録音の『スーパー・ヴァイオリンの名技』。メータ&イスラエル・フィルとの絡みから生まれる、滾るような情念とロマンの炎は、若き日の彼の天才ぶりを最良の形で味わえる1枚と言ってよいだろう。

 

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