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Mariana Baraj 『サングレ・ブエナ』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/09/13   18:00
ソース
intoxicate vol.105(2013年8月20日発行号)
テキスト
text:土佐有明


フォルクローレの進化論がここに。アルゼンチンの女傑が新作をリリース。

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カルロス・アギーレ、リリアナ・エレーロ、アカ・セカ・トリオなど、アルゼンチン発のユニークなコンテンポラリー・フォルクローレが昨今日本でも注目を浴びている。フォルクローレというと垢抜けないイメージを持つ人もいるだろうが、彼らの洒脱で洗練された音楽性は英米のネオ・アコースティックやインディー・ポップとも共振するもの。民俗音楽の文脈上にありながら、極めて現代的な響きを帯びているのだ。

そんなシーンの中でも際立った存在感を示す才女が、打楽器奏者にしてシンガー・ソングライターのマリアナ・バラフ。02年のアルバム・デビュー以来、フリー・ジャズとフォルクローレの融合に挑んだり、エレクトロニカを導入した作品を発表しながら、伝統と革新を同時に重んじるスタンスを貫き通してきた。そして、2010年にリリースされた前作『チュリータ』では、カヴァー主体だった過去作から一転、すべてを自作曲で統一し、今を生きる“フォルクローレの最新型”を見せてくれたのだった。

新作『サングレ・ブエナ』はその発展/進化形とでも言うべきアルバムで、エドゥアルド・ファルーとハイメ・ダバロスによるアルゼンチン・フォルクローレの名曲《古い愛のトナーダ》以外はすべてオリジナル。アルゼンチン北部、ボリビア、ペルーのフォルクローレのリズムをベースにしながらも、カラフルでポップな印象のサウンドに仕上げている。

特に耳を惹くのが、ボンボやレグエロといったパーカッションの重厚で野太い響き。クリアな低音を強調した音像は、さながらフォルクローレ版ウォール・オブ・サウンドといった趣だ。野性味溢れるヴォーカルや流麗なメロディも魅惑的だが、音響の快楽という観点からも高く評価できる作品だろう。なお彼女は8月末に富山と東京でライヴを行う予定。フォルクローレが今ここまで進化しているということを実感するためにも、ぜひ足を運んで欲しい。