©Kousuke Mori
〈コラボ〉でも〈フィーチャリング〉でもない。〈Vs=ヴァーサス〉なのだ！！
イヴェント名の読みが判別出来なかったので、とりあえず「またたき」と打って漢字を出そうと思い、また、まで打ち込んだところ、予測変換の文字列の一番上には（*＾-＾*）ノ~~ﾏﾀﾈｰ、という顔文字が表示されている。思わず苦笑してしまったが、電車に乗っている人の大半がずっとスマホで何かにアクセスしている2013年現在、日本語のキーボード入力はただでさえ複雑な回路を経由して成されるのだから（書きたい言葉を一旦子音と母音に分け、それをさらにローマ字という特殊なシステムで変換し、出てきた言葉をさらに適切にカナひらがな漢字で分節して定着させなければならない、というこの手間への苛立ちが、興奮した時についwwwwwwwwwwwwとダイレクトに連打してしまう人を多数生んでいる原因だと思う）、あなたが書きたいこと、あなたが知りたい情報を、ネット側が先回りして「これでしょ？」と教えてくれるためのシステムが必要となるのは当然のことだとは思うが、ところで、ここに、予測変換も単語検索もまったくもって通用しないだろうパフォーマンスのステージがある。フリージャズ・ピアニスト・スガダイローが、池袋のあうるすぽっとにて十月の終わりから十一月のはじめまで、舞台芸術の分野で活躍してきたダンサー・振付家・演出家たちと次々と対峙してゆく五日間公演である。
毎日異なる共演者の顔ぶれは、これだけ取って並べてみても実に豪華かつ多彩であり、しかもその多彩さのエッジは全員違う方向を向いている。ここ数年間に「舞台芸術」の分野であらわれたあらたな広がりを担う面子が揃っており、身体・言葉・オブジェ・美術・衣装・音楽・映像・照明・殴り合いなど、舞台の上に載せられるすべての素材をふるいに掛けながら、彼ら、彼女らは、おそらく各日ごとにまったく異なった時間と空間を劇場内部に出現させることだろう。
スガダイローはその世界にピアノ一本で切り込んでゆくことになる。相手がダンサーだろうがミュージシャンだろうが、素人だろうが、動物だろうが（通りがかった犬と自然発生的なセッションをおこなうBlackSheep吉田隆一の動画を、YouTubeで見ることが出来る）自然現象だろうが（打ち上げ花火と競演した山下洋輔）、フリージャズ・ミュージシャンはとりあえず、まず彼らと同じステージに立つところからその仕事をはじめる。フリージャズの基本姿勢は、昨今流行の「コラボ」でも「フィーチャリング」でもない。それは「Vs＝ヴァーサス」である。ステージ上でやりとりされる音や動きは、異なったシステムで動くそれぞれのプレイヤーのあいだで猛烈な勢いでやりとりされ、その意味と価値をリアル・タイムで変換されながら、それこそ検索なんておっつかない勢いで情報は更新され続けてゆくのだ。スガダイローが放つ音が、ダンサーたちに聞き取られ、その動きに干渉し、また、演出者が作り出す空間が、ピアノの音の意味を変換してゆく、そのようなプロセスを経験すること。
全てを一旦01のデータに均してから事をおこなうコンピュータ上では、どんなものも並列で処理されるので、根源的には、二つの異なったシステムを存在させることも、出会わせることもできない。滅茶苦茶に異なったものたちが切り結ぶ、あうるすぽっとにこの秋あらわれるだろうステージでの出来事は、おそらくぼくたちがこれまで見たことがないほどに、速く遠く、力強く、単純で複雑な算法を描くだろう。そして、さらにいうならば、『勝負は勝ち負けではない』（by坂田明）。では一体何なのか？
この名言の意味を実感するためにも、目と耳と身体全体を劇場空間にぜひ浸してみて欲しい。
LIVE INFORMATION
あうるすぽっとプロデュース N/Rプロジェクト
スガダイロー五夜公演 『瞬か』
出演：スガダイロー
10/30（水）20:00開演 岩渕貞太、田中美沙子、喜多真奈美
11/1（金）20:00開演 飴屋法水
11/2（土）18:00開演 contact Gonzo
11/3（日）18:00開演 酒井はな
11/4（月）18:00開演 近藤良平
会場：あうるすぽっと
http://matataka.asia
http://www.owlspot.jp
野外でのソロ・フリーライブ決定！
10/20（日）16:30～ 会場：池袋西口公園（無料）
ヴィヴィアン佐藤によるトークショー毎日開催！
各公演の1時間前 会場：あうるすぽっとホワイエ（無料）
