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(第18回)ローリング・ストーンズらを陰で支えたクラウディア・リニア

連載
岡村詩野のガール・ポップ今昔裏街道
公開
2013/11/25   17:00
更新
2013/11/25   17:00
テキスト
文/岡村詩野


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ライター・岡村詩野が、時代を経てジワジワとその影響を根付かせていった(いくであろう)女性アーティストにフォーカスした連載! 第18回は、70年代に数多くの人気アーティストを影で支えたシンガーで、12月に日本公開される映画「バックコーラスの歌姫たち」にも登場したクラウディア・リニアをを紹介します!



ポール・マッカートニーが新作をリリース、そして来日記念ということで前回のこの連載ではポールのかつてのガールフレンドでもあったペギー・リプトンをご紹介しました。ポールの来日といえば、ちょうど九州で行われていた大相撲へ、彼は現在の奥様であるナンシーさんと観戦に訪れていて、桟敷席で仲睦まじく寄り添い、同席していた玉ノ井親方の解説を熱心に聴き入る様子が大々的に生中継されていましたね。なんたってサービス精神旺盛なポールです、あれは親方の説明を聞きながら翌日の福岡公演でシコのひとつも踏んでみるとか、髷のカツラを着けてみるなどのアイデアを練っているのではないか……などと不純な想像をした自分を後から恥じるほど、しかしながらポールは70代とは思えぬパッションですべての来日公演に全力で向き合っていました。60年代にポールとお付き合いしていたペギー・リプトンはその後も数多くのミュージシャンと浮き名を流し、クインシー・ジョーンズの妻に落ち着いたわけですが(もっとも、それもまた破れましたけど)、恋愛によってステップアップし、エネルギーを満たしていったのは女性のほうではなく他ならぬポール自身なのではないかと、ナンシーさんを伴って大相撲を楽しそうに観戦するポールを見ながらふと感じた次第です。嗚呼、ペギー・リプトンの現在にも幸あれ!

さて、今回ご紹介するのも多くのスターたちに愛され、その作品にも少なからず影響を及ぼした黒人女性シンガーです。一般的にはローリング・ストーンズ“Brown Sugar”、デヴィッド・ボウイ“Lady Grinning Soul”のモデルとされているクラウディア・リニア。ミックやボウイと個人的なお付き合いをしていたかどうかは確証がないですが、音楽シーンが変貌を迎えつつあった70年代、ロックの成熟のシーズンを支えた歌い手だったのは間違いありません。

クラウディアはもともと人気アーティストのステージやレコーディングのサポートを務めたバック・コーラス嬢。アイク&ティナ・ターナーのバックで歌うアイケッツの一員だった時代にキャリアを積み、前後してジョー・コッカーやレオン・ラッセル、スティーヴン・スティルス、ライ・クーダー、ドン・ニックス、ホセ・フェリシアーノら数え切れないほどのアーティストのツアーや録音にも参加しました。言ってみれば、黒人音楽指向の強い白人アーティストに、ソウルのフィーリングをみずからの歌で持ち込んだ影の立役者というわけです。彼女の仕事は記録として残されているものだけでもビッグネームがズラリと並ぶわけですが、クレジットがないものはその何倍もあると言われており、いかに当時のクラウディアが広く貢献してきたかがわかるというもの。実際、ミック・ジャガーが彼女と知り合って“Brown Sugar”を作るきっかけとなったのは、クラウディアを含むアイケッツを伴ったアイク&ティナ・ターナーをオープニング・アクトに迎えた69年のストーンズの北米ツアー中だったそう。ロック名曲誕生の影にやはり女性との交流あり、というわけなのです。

このようにバック・コーラスで鳴らしたクラウディアですが、73年には唯一のリーダー作『Phew!』(邦題〈クラウディア・リニア〉)を残しています。LAで録音され、当時のスワンプ・ロック~ニューオーリンズ・サウンド色が濃厚な一枚。アナログ・レコードで言えばA面にあたる前半5曲にはライ・クーダーやジム・ディキンソン、マイク・アトリーらが参加し、ロン・デイヴィスのカヴァーや、このアルバムのプロデューサーであるイアン・サミュエルとの共作曲などを収録しています。片やB面にあたる6曲目からはニューオーリンズ風味が全開。アラン・トゥーサン、スプーナー・オールダムら錚々たるメンバーが脇を固めているほか、ジム・ケルトナーやチャック・レイニーらも力を貸すなど、当時の南部サウンドと西海岸サウンドを融和させたようなホットな内容になっているのです。ストーンズ『Exile On Main St.』、ザ・バンド『Cahoots』あたりの姉妹作、といったイメージでしょうか。

クラウディアの歌は一度聴いたら忘れないようなパンチの効いた類のものではないかもしれませんが、適度にエナジェティックで適度に人懐っこさもある、とても聴きやすいものです。彼女がかつて一員だったアイケッツの作品もリイシューされて手軽に聴けるようになりましたが(ただし、すべての作品にクラウディアが参加しているわけではありません)、曲によってはシュープリームスのようなキャッチーさ、キュートさもあり、ブラック・ミュージックのポップな部分を裏側で伝える役割を担っていたことにも気付かされるはずです。

残念ながらソロ・シンガーとしては大きな成功を収めることなく、現在はLAで教師の仕事をしているという彼女。けれど、当時の陰日向の活躍をもっと知りたいという方には、クラウディアをはじめ、彼女のようなキャリアを持つシンガーたちを取り上げたドキュメンタリー映画「バックコーラスの歌姫たち」をお勧めします。日本でも間もなく公開されるこの映画では、実力のある裏方の存在がロックをプログレスさせてきたことがわかるはずです。



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