思い出のレコード屋との奇跡&まさかの再会
〈I LOVE VIDEO〉本店。イカしすぎてるこの外観
店内に入ってビックリ、この広さ。〈CULT〉の文字のデカさがこの店のアティテュードを物語る
そんなわれわれのささやかな復讐劇だったが、時間の都合上そろそろお開きといったところで、最後にどうしても行きたい場所があった。それは90年代に訪れた際、ビッグ・ボーイズのオリジナル盤をみんなで発見した思い出のレコード屋だ。しかし、当時の記憶は曖昧で店の名前もわからない。どうにもならず、そろそろ諦めようとしていたところで、この街の有名人、ダニエル・ジョンストンの83年作『Hi, How Are You』のカエルが描かれている壁に辿り着いた。チャーベ君やタカヒロ（山口隆弘、Niw! Records代表）らも合流し、せっかくなんで……と、〈流石オースティン!〉なんて言いながらこの壁の前で記念撮影をすることに。何の気なしにあたりの景色を見て、ハっとした。慌ててその壁がある店の入口をダッシュして確認するが、そこは飲食店。しかし、通りからの景色を望んでみると、〈あれ? これって……〉――ガン!と突然アタマの中のスイッチが作動する。そして目の前の景色と記憶の断片が結び付き、猛烈な勢いで複雑なパズルが仕上がっていった。
〈オークラ君!! ここの壁、というかこの店って、もしかしてあの時のレコード屋じゃない?〉
〈え……、うわ……本当だ!〉
どうやらオークラ君のアタマの中でも同じ現象が起きたらしい。冷静に考えると、そこから見えた景色は決して当時のままではなかったけど、確かに15年以上前のあの日あの時、6人でレコード片手に狂喜しながら見ていた景色に違いなかった。しばらくの間、胸のあたりがジンジンしていた。
ダニエル・ジョンストンによる歴史的壁画の前でパチリ。この後、いろいろ思い出すことになるとは
ホテルに戻って、オースティン・マスターであるyounGSoundsのモリカワアツシさんに答え合わせの確認を急ぐ。するとやはり、そこには当時〈SOUND EXCHANGE〉という素晴らしいレコード屋があったとのこと。何かに導かれたのか、それはわからないけど、どうやら知らない間に辿り着いていたらしい。〈あの時はダニエル・ジョンストンの描いた壁に気付かないくらいビッグ・ボーイズのレコードに夢中だったなんて、いやいやバカだったねえ〉、そんな会話をしながら荷物をまとめた。
次の日、オークラ君はティム・カーの原画を片手に、自分はカリプソ・ハットをスネア・ドラムに忍ばせて、トラブルはゼロで東京へ帰った。いやあ、大人になるってのも悪くないもんだな、なんてことを思いながら、われわれのオースティンへのささやかな復讐劇は終わったのだ。
ということで、やはり第１回目から全然DVDの話を全然しませんでしたね。が、とりあえず〈I LOVE VIDEO〉の地元愛が炸裂した、〈オースティンを舞台にしている映画コーナー〉にもあった「ローラーガールズダイアリー」「バッド・チューニング」（現在DVDの取り扱いなし）、「悪魔とダニエル・ジョンストン」を鬼プッシュしておきます。カッコ良くて奇妙な街、オースティンを少しは味わえるはず。気になった人はその足で遊びに行ってみて。そして馬に乗った警官がいたら〈JxJxが宜しく言っていたよ〉とお伝えください。それじゃあ、また。
PROFILE／サイトウ“JxJx”ジュン
73年、東京生まれの神戸育ち。FRUITY～SCHOOL JACKETSを経て98年にYOUR SONG IS GOODを結成し、オルガン／ヴォーカル／リーダーを担当。2002年のミニ・アルバム『COME ON』でCDデビューし、ファンキーかつルーディーな東京発カリブ経由の雑多なダンス・ミュージックを展開。全国各地でパーティーを繰り広げている。これまでに2枚のミニ・アルバムと4枚のフル・アルバムを発表。2011年には初のベスト盤『BEST』（KAKUBARHYTHM／ユニバーサル）をリリースしている。現在は絶賛ニュー・アルバムの制作に励んでいる模様。8月17日（土）に〈RISING SUN〉、8月31日には〈SWEET LOVE SHOWER〉へ出演するほか、夏フェスも続々と決定しております。また、YSIGの前身バンド・SCHOOL JACKETS音源の編集盤が9月18日にリリース決定! そのほか詳しい情報はこちらのサイトでチェック!
