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【第8回】――Nothing's Carved In Stone

連載
生形真一の六弦生活
公開
2013/08/14   00:00
ソース
bounce 357号(2013年7月25日発行)
テキスト
インタヴュー・文/土田真弓


ひたすら六弦生活を送る男が、ギタリスト目線も交えて名盤を紹介する連載!



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【今月の一枚】Nothing's Carved In Stone 『REVOLT』 エピック(2013)

俺ね、ひとつ前の『Silver Sun』っていうアルバムがいまでもすごく好きで。完成したとき、ホントに良いものが出来たと思ったんですよね。でもそのぶん、〈次はどういうものを作ったらいいんだろう?〉って思ったのもはっきり覚えてる。それで結局、去年の6月にまた制作が始まったときはどこに向かうっていうのはなく、ただ一曲一曲〈こういう曲を作ろう〉って話しながら作ってったのがこのアルバムなんですけど……今回は最後まで悩んでましたね。マスタリングの2日後ぐらいにもう一回聴き直して、そこでやっと〈ああ、いいアルバムが出来たな〉って思えたんです。

“Out of Control”(今年3月にリリースされた先行シングル)の取材のとき、「これまでは〈理解されるだろうか?〉って恐れてたような曲も次のアルバムでは出していく」って言ってた曲は、“Sick”と“The Fool”ですね。“Sick”はね、歌にしてもギターにしても、マイナー・スケールのなかにメジャーがちょこちょこ出てくるんですよ。それって俺のなかでは汚いもののなかに綺麗なものがある感覚なんですけど、ただ、(耳触りが)気持ち悪くないかな?って。でもみんなに訊いたら〈全然大丈夫だから〉って……そういう感じで作っていった曲ですね。“The Fool”はもう、メチャクチャじゃないですか。リズムもバラバラなところがあるし。“Sick”も“The Fool”も、ギリギリのところでバランスを取ってるみたいな危うさがあって、でもそのぶん独創的な曲が出来たと思いますね。両方ともアレンジに時間がかかったけど。逆に、最後に出来た“Assassin”なんかは、その場の感覚で一気に作った曲ですね。Nothing'sはロックでどれだけ格好良いものを作るかっていうのにずっとこだわってて、ギターのリフだとか、ドラムの16ビートで踊らせるとか、そういうところを頭に置いて作ってたんですけど、“Assassin”はわりと逆で。ギターもサビは歪んでますけど、あれだけクリーンで通した曲ってあんまりないし、しかもずっと同じアルペジオを繰り返してる。リズムも淡々としてるし、Nothing'sにしては新しさのある曲じゃないかな? 音数もなるべく少なくして、間で、音と音の隙間で曲を構成するっていうことを突き詰めた曲ですね。

歌詞は今回、“Sick”と“きらめきの花”を書いてます。“Sick”はベースの最初の音が普通じゃないし、そのあと入ってくるギターもおかしいし、もうタイトルは“Sick”しかないと。“きらめきの花”は〈救いがある〉って言われるんだけど、俺のなかでは、根本的に書いてることは同じなんです。見る角度が違うだけで、どっちもバンドや人生のことを書いてて。Nothing'sはメンバー全員が前向きな人間だと思うんですね。困難にもめげずに前に行くっていう、そういうイメージです。

Nothing'sって、結成した頃から〈音が無機質で格好良いよね〉って言われてて。それは自分でも良いことだと思ってたんですけど、ずっとやってくうちに、もっと他のことも表現したくなったんですよね。ギターの一音を出すにしても、そこにどれだけ深みを持たせるかとか、どれだけの思いを込めるかとか……レコーディングにしても、今回はリズムなんか多少ヨレてても感情が出てるほうがいいなとか、そこに重きを置いていて。だから今回は、すごい感情的なアルバムだと思います。そこが今回めざしたところで、伝わったらすごく嬉しい。いままでは人間味をあえて排除してた節はあって。徹底的に格好つけてたんですけど、ちょっと泥臭くなったっていうか、弱い部分も全部をさらけ出したアルバムかなって思いますね。



▼Nothing's Carved In Stoneの2012年作『Silver Sun』(エピック)

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