ブラジル・ユニバーサル音源再発シリーズ第3弾!60年代の傑作を紙ジャケで復刻! 美しい!
「ジャズはよく知らない。わたしはわたしの音楽をやってきただけだ」というのは山下洋輔によって引用されたアントニオ・カルロス・ジョビン(トム・ジョビン)の言葉だが、トムの真意がどこにあるにせよ、ブラジルにはジャズとブラジル音楽の交差点で活動してきたミュージシャンが多い。ユニバーサル音源再発シリーズのフォルマとポリドール、ふたつのレーベルからの5作品にもその傾向が見られる(うち3作は初CD化)
いちばんの人気作はエウミール・デオダートの『イヌチル・パイサージェン』だろう。トム・ジョビンの名曲のストリングスやホーン入りのまろやかな演奏は、編曲に興味がある人には発見満載。
アナ・マルガリータの『アナ・マルガリータ』は、タンバ・トリオのリズムとキンテート・ヴィラ・ロボスの管弦の格調高さが魅力的。しっとりした歌は、友人にささやくような親密感にあふれている。
エリアーナ&ブッカー・ピットマンの『ニュース・フロム・ブラジル、ボサノヴァ』は、ジャズの素養を持つ親娘によるボサノヴァ。エリントンの《スウィングしなけりゃ意味ないね》のような曲もやっている。キュートな歌声が映えるポップなアルバムだ。
レニー・アンドラーヂの『ア・アルテ・マイオール・ヂ・レニー・アンドラーヂ』は、ピアノ・トリオでうたうライヴ盤。アルトのハスキーな歌声、タイトな演奏ともに、今回の復刻中では最もジャズ的な1枚。キューバのフィーリンに通じる感覚も含まれている。
チタの『チタ』は60年代中期、ボサノヴァ末期に作られた作品。下町娘的な歌声と軽妙にして簡潔な演奏は、今回の復刻中では最もボサノヴァらしいボサノヴァ。しかし管のソロなど細部にはやはりジャズの遺伝子が。
60年代の日本ではリアル・タイムで聞きにくかった作品ばかりなので、このリイシュー・シリーズは驚きの連続でもある。