アナログ〜デジタルまで、電子の音楽の歴史
教授と言えばその時代ごとにジャンル/国籍を問わず、最も先鋭的なアーティストとコラボを重ね、そして、その時々の思索を反映させた作品を発表し続けて来た。その一角を成し、しかも結構大きな分布を占めていると思われるのがテクノロジーと音楽の関係についての試みだ。全ては書ききれないが、YMOはもちろん、オペラ『ライフ』、近年ではAlva Noto、fenneszとのコラボなど。それこそアンダーグラウンド〜オーヴァーグラウンド問わず、パンク、ニューウェーブ、テクノ、エレクトロニカ etc.縦横無尽なフットワークを見せてきた。
今回のテーマの電子音楽はいわゆる現代音楽の世界のもので、クラシックの歴史上でも徒花のイメージを持たれている(?)このジャンルの立ち位置を鑑みても、このシリーズで電子音楽を扱い、教授が監修/紹介するのは本当に意義ある事だと思う。
と言うのも、電子音楽のこれまで試みられた様々な軌跡があったからこそ、今の豊潤な音楽があり、専門家の手を離れて商業音楽に於いても自由に扱われる様になっている電子音楽の現在までのルーツを知るのにも避けては通れない道だからだ。そして、ジャンルを問わずに活躍する教授が語るからこそより説得力がある。
今回も100ページを越える大部のブックレットが付き、座談会では教授の他に小沼純一、三輪眞弘、川崎弘二という電子音楽を語るのにこれ以上無いメンバーが参加しており、ならではの独特かつ真を突いた議論が楽しめるはずだ。また、推薦盤、電子音楽史年表なども掲載されている。
そしてCDにはシュトックハウゼン、フェラーリ、クセナキス、ケージ+チュードア、湯浅らの電子音楽の歴史に名を残す作品を収録し、ブックレットと合わせて実際の作品から、電子音楽の世界をより具体的に知る手掛かりとして大変楽しめる作りとなっている。是非とも、今回のscholaを入口に色々と作品を体験してみて欲しい。