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エバ・ジェルバブエナ

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公開
2014/02/26   17:00
ソース
intoxicate vol.108(2014年2月20日発行号)
テキスト
text:佐藤由美


最高峰のフラメンコ・エッセンスに触れる好機、到来!

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©Jose Luis Alvarez

アーティスティックなフラメンコの舞台で、近年もっとも高い評価と人気を集め、練熟の境地を迎える女性舞踊手&振付家、エバ・ジェルバブエナ。ストイックに研ぎ澄まされ、ディープなエッセンスを凝縮したそのパフォーマンスは、どこか鋭いタッチのエッチング作品を思わせる。表層の華やかさではなく、陰影に富む技と表現の凄み……。ほぼ2年ごとに発表してきた作品のテーマもかなり内省的で、人間の複雑な胸の奥底をえぐり出す、一級の非凡な舞台ばかりだ。

とかくフラメンコの新作は、スペイン人好みの歴史大作ものか、曲種のバリエーションを活かそうとするあまり、苦悩と熱情ない交ぜの類型ドラマに落ち着きがちなのだが、エバは違う。ステレオタイプをいかに脱却するかを、舞踊団の使命としているかのようだ。

例えば、彼女の名声を決定づけた、2000年の作品『シンコ・ムヘーレス・シンコ(5対5の女性たち)』。開演30分前の客入れ時から、彼女は舞台上の椅子に座り、観衆が着席するさまを微動だにせず見守っている。観る者と観られる者との逆転劇を、敢えて仕掛けてみせたのだった。だから、ちょっと抽象的で理解しづらいよね~とのファンの声も聞こえてくる。いや、難解なのではなく、すこぶる内面的な表現者なのだ。

1993年来、もう何度目の来日になるだろうか。信望篤きマエストラ、渾身の舞台『ジュビア(雨)』は、2009年初演。3月よりワールド・ツアーを再開。主題は、メランコリーと愛の喪失へのオマージュ。真骨頂と称されるソレアほか、ほとんど舞踊曲種として演じられないムルシアーナ、レバンティカ、タラント、タランタ、ミロンガ、ロメーラス、スペイン歌謡クプレ(コプラ)までを披露する。

雨といえば、エバと縁の深い、ピナ・バウシュ作品のひとつ『フルムーン』を思い起こす舞踊ファンもおられるだろう。2012年公開、カルロス・サウラ監督『フラメンコ・フラメンコ』で降りしきる雨の中、子守唄ナナを踊るエバの一幕も、記憶に新しい。撮影は、『雨 (Lluvia)』初演と同年。雨と憂愁に、某か惹かれるものがあったのかも知れない。

世界初演『泥と涙(De la Cava, Barro y Llanto)』は、98年の代表作『エバ』同様、彼女の創作の軌跡をダイジェスト版でお届けする内容らしい。デ・ラ・カバ(洞窟から)とは、彼女のルーツであるグラナダを示唆したものだろう。

音楽監督&ギタリストは、もちろん伴侶のパコ・セラーノ。最高峰のフラメンコ・エッセンスに触れる好機、到来だ。



INFORMATION


2014年英国ナショナルダンス・アワード最優秀女性舞踊家部門ノミネート 
ピナ・バウシュをも虜にした巨星エバ 
フラメンコ界最高のミュージシャン、ダンサーをたずさえ5年ぶり待望の来日公演

Ballet Flamenco Eva Yerbabuena
エバ・ジェルバブエナ フラメンコ舞踊団

公演日程】3/22 (土) 23 (日)
【会場】新宿文化センター 大ホール
【出演】エバ・ジェルバブエナ

○3/22(土)17:30開場/18:00開演
『 泥と涙 』[ 世界初演 ] De la Cava, Barro y Llanto

○3/23(日)14:30開場/15:00開演
『 雨 』[ 日本初演 ] Lluvia.

http://www.parco-play.com/web/program/eva/