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(第3回)ソニード・ガジョ・ネグロとメキシコシティの〈マルチ文化フォーラム〉

メキシコのアンダーグラウンド文化の総本山、アリシアとは?

連載
長屋美保のハポチランガ・クロニクル
公開
2014/02/27   18:30
更新
2014/02/27   18:30
テキスト
文・写真/長屋美保


メキシコのアンダーグラウンド文化の総本山、アリシアとは?



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(左上)アリシアの外観(右上)アリシアの入り口のチケット売り場
(左下)ヒップホップ・イヴェントの様子(右下)政治集会の様子



95年の設立以来、ムルティフォロー・アリシアでは、マヌー・チャオやアンパラノイア、フェルミン・ムグルサ、ケッツァル、アストラン・アンダーグラウンド、ボカフロハ、ロストアカプルコ、マルディータ・ベシンダー、ロス・デ・アバホなど、多くの骨のあるアーティストたちが伝説的なライヴを行ってきました。メキシコのインディー・ミュージックの登竜門的な存在として知られています。



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フェルミン・ムグルサとスロアックのライヴも至近距離で楽しめるアリシア!



ライヴハウスではなく、〈マルチ文化フォーラム〉を名乗るのは、EZLN(*)の支援や音楽CDのリリース、国際アナーキスト集会、インディーズ見本市、映画の上映などさまざまな文化/社会活動の場としても機能してきたからです。
*サパティスタ民族解放軍。メキシコ南部のチアパス州を拠点に、北米自由貿易協定反対を機に立ち上がった組織。現在ではチアパスだけでなく、メキシコ各地に散らばる自治区を拠点に先住民や女性の権利を訴え、反グローバリズムのために闘い続けている。

〈NYのCBGBはなくなったけど、メキシコシティにはアリシアがあるぜ!〉と、誰かが言っていた通り、ここはメキシコシティのロックが生まれる場所。いつも反逆児たちの溜まり場であり、観客たちの熱気に満ちています。満員の日には、天井から滴り落ちる観客の汗で、持っていたビールがミチェラーダ(メキシコ特有の塩とレモン汁をビールに入れる飲み方)になってしまうことも(うげー!)!!
無理矢理詰め込んで500人くらい収容できる、それほど広くはない空間。トイレも綺麗じゃないしオシャレでもないけれど、ここに来ると落ち着きます。もちろん楽屋もない。だから、観客のそばで出演アーティストたちがうろうろしているような、垣根がない感じがいい。



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ソニード・ガジョ・ネグロのベーシスト=イスラエルと、ギタリストであるガブリエルのお父さん・フェリックスさんがグッズやCDの物販をしています。こんな光景もアリシアならでは!



初めてアリシアに行ったときは長い時間外で待たされたのですが(いつも告知される開場時間にちゃんと開いたためしはない)、ライヴのためにめいっぱいオシャレしたキッズたちが並んでるのを見ていたら、筆者が中学時代に、ライヴハウスの前で開演までドキドキしながら待っていた記憶が蘇ってきたなあ(おばちゃんにも、そんな可愛いときがあったのよ)。
アリシアは政府の嫌がらせで閉められそうになったり、経済的にも決して余裕がなく、苦労の連続だと思いますが、それでも、すべての人に開かれたフォローを18年間も続けているのです。



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18周年を迎えたアリシアを記念するポスター (C)Musica Contra El Poder



アリシアのイヴェント告知用ポスターのグラフィックはすごくカッコイイのですが、それは告知や宣伝というだけじゃなく、社会的なメッセージを発信するものが多いです。



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アリシア内に貼られたポスター



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〈文化に対する税金反対! そのために結束しよう!〉というポスター



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アリシアのポスター・デザインいろいろ。政治犯解放や麻薬戦争への批判、教育と文化の大切さを訴えるもの、コンドーム着用キャンペーン、女性の権利などさまざまなメッセージが込められている (C)Musica Contra El Poder



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筆者が気に入っているデザイン。
(左)EZLNのCDリリース記念のもの (右)インフルエンザがメキシコで流行して国際的に話題になった際、〈メキシコでもっとも悪いウィルスは政治家と政党だ〉と訴えている (C)Musica Contra El Poder



ポスターは大概、アリシアの代表・ナチョとデザイナーのアンドレスが組んで考えるそうで、町に貼ったときにそのポスターが理不尽な社会に対する抵抗の姿勢を示すようなものでありたいという意味から、〈Musica Contra El Poder(権力に抵抗する音楽)〉というプロジェクト名が付いています。
かつてメキシコのプロレス=ルチャリブレのポスターは単色~3色くらいのガリ版印刷だったのですが、このアリシアのポスター・シリーズも以前は同じ製法で作っていたそう。現在、印刷方法は変わってしまったようですが、あえてシンプルなデザインを心掛けているのだとか。どんなに遠くからでも、ひと目見てアリシアのポスターだ!とわかるところがスゴイ。



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デモにもアリシアのポスターは健在。ウルグアイの作家、エドゥアルド・ガレアーノの言葉〈たくさんの小さな人々が、いろんな小さな場所で、こつこつと動き続けていれば、世界を変えることができるんだ〉が記されています



そんなアリシアのポスターに興味を持った方にお知らせ! 今年3月以降にメキシコへいらっしゃる方、アリシアの18年間の歴史が詰まったポスター回顧展〈Alicia 18Años Wonderland〉が開催されますよ~。



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〈Alicia 18Años Wonderland〉のポスター



Facebookの本イヴェント・ページは〈Musica Contra El Poder〉シリーズはもちろん、さまざまなアーティストとコラボレーションしてきたこれまでのポスターも展示されます。この展覧会の会場となるギャラリー、ヴェルティゴは、アリシアのポスターでも可愛いイラストを描いてきたドクトル・アルデレテがオーナー。実は彼、ソニード・ガジョ・ネグロのメンバーで、テルミンやVJ、ジャケット・アートワークを担当しているんですよ。バスクの反骨ロッカー/映画監督・フェルミン・ムグルサの最新映画「Black is Beletza」では初めてアニメーションの作画担当を務めています。



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フェルミン・ムグルサの映画上映(左)とソニード・ガジョ・ネグロのライヴ(右)のポスター



アリシアでは3月6日に、フェルミン・ムルグサが日本を含めて世界を回った2013年の〈No More Tour〉のドキュメンタリー映画上映があり、3月8日にはソニード・ガジョ・ネグロのライヴが開催されます。メキシコシティにこの時期いらっしゃる方、ぜひ行ってみてくださいな~!

ちなみに筆者は、アリシアで呑んだくれてライヴを観ていることが多いです。メキシコの第二の家と言っても過言ではありません。いやー、ふと気がつけば40オーヴァーにして生活スタイルがまったく変わっていない永遠の中学生ですよ。身体のサイズは、その頃から……だいぶ変わったがな!
そんな筆者の若さの秘訣は中学生の魂を失わないことだと、美魔女志願者に教えてあげたいわ!……いや、告白すると、もう明け方まで夜遊びするのはキツいんす。すいやせん。最近はめっぽう酒に弱くて、酒にも呑まれてます。ということは、若さを保つにはやっぱり……呪術かしらね~。



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