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JAZZ WEEK TOKYO 2014

カテゴリ
O-CHA-NO-MA PREVIEW
公開
2014/03/04   20:00
ソース
intoxicate vol.108(2014年2月20日発行号)
テキスト
text : 村井康司


JAZZ WEEK TOKYOは、昨年オープンした渋谷ヒカリエのシアター・オーブでスタート

去年の春、渋谷ヒカリエのシアター・オーブで行われた『JAZZ WEEK TOKYO 2013』は実にエキサイティングなイヴェントだった。ウェイン・ショーター、エグベルト&アレシャンドレ・ジスモンチ、ピンク・マルティーニと由紀さおり、菊地成孔ペペ・トルメント・アスカラール、ソイル&ピンプ・ビッグバンド、そして八代亜紀と日野皓正。ジャズというジャンルの懐の深さ、幅の広さを体現するような面々による6日間だった。

そして今年も「春の祭典」が開催されることになった! 今度は場所を同じ渋谷の東急オーチャード・ホールに移し、昨年に引けをとらない強力で多彩なミュージシャンたちが次々にステージに立つのだからうれしくなる。



JAZZ WEEK TOKYO2014は、UAと菊池成孔の「キュア・ジャズ・リユニオン」から!

「JAZZ WEEK TOKYO 2014」は4月3日(木)の、UAと菊地成孔の「キュア・ジャズ・リユニオン」で幕を開ける。2006年にリリースされた二人の共演作『cure jazz』は、ジャズ・ヴォーカリストとしてのUAの魅力を菊地が発見=発掘し、二人の美意識が奇跡的な出会いを遂げた傑作だ。スタンダード曲あり、二人のオリジナルありの選曲で、菊地成孔の都会性の中に潜む野性、UAの野性の奥に光る都会性が互いに輝く、という理想的なコラボレーションだった。メンバーもレコーディングと同じ面々—坪口昌恭、鈴木正人、藤井信雄、パードン木村—を揃えての、8年ぶりの二人の再会は、いったいどんなことになるのだろうか。



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Char、リトナー&グルーシン、綾戸智恵&前田憲男+原信夫と豪華な面子が続く!

翌日4月4日(金)は、日本を代表するロック・ギタリスト、Charをフィーチュアする「エレクトリック・ギターの夕べ」だ。1955年生まれ、70年代前半に伝説的バンド「スモーキー・メディスン」(ヴォーカルは金子マリだ!)でデビューし、70年代後半になるとシングル・ヒットを飛ばすスターとなったCharは、現在に至るまで常にロック・シーンの第一線で活躍し続けるギター・ヒーローだ。今回はベースの澤田浩史、ドラムスの古田たかしなどをメンバーに迎えてのステージ。ハード・ロックもブルースもファンクもフュージョンも見事に演奏するヴァーサタイルなギタリストのCharが、「JAZZ WEEK」という場でどんな演奏をするのか、実に楽しみだ。

5日(土)は、リー・リトナーとデイブ・グルーシンの「ブラジル・プロジェクト」による「ザ・ジョビン・トリビュート」。ブラジル音楽に縁の深い二人が、ジョビンの孫であるダニエル・ジョビンと、ジョビンと共演経験がある小野リサを迎えて、偉大な作曲家アントニオ・カルロス・ジョビンに捧げるこのステージ、詳細は中原仁さんの別稿をお読みになっていただきたい。個人的には、79年のリトナーの名盤『イン・リオ』の曲をやってほしいな、と思っています。



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そして6日(日)、綾戸智恵と前田憲男スペシャル・ビッグ・バンドの共演「マイ・ウェイ」は、にぎやかでゴージャスな舞台になりそうだ。ソウルフル、というありきたりな言葉では覆い尽くせない「大阪発ニューヨーク経由」の綾戸智恵のパフォーマンスは、まさにワン・アンド・オンリーのもの。日本を代表するビッグバンド・アレンジャーである前田憲男のペンが、綾戸智恵の個性的な歌とどう絡むのか、期待は大きい。バンドのメンバーも一流揃いで、しかもゲストとして綾戸智恵との縁も深い、元シャープス&フラッツのリーダー原信夫(なんと御年87歳だ)が登場するというのだからうれしくなる。



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ウェイン・ショーター再来!今年はブライアン・ブレイド参加のオリジナル・カルテット

ここでJAZZ WEEK TOKYO 2014は8日間の中休み。そして14日(月)と15日(火)は、昨年に続いてのウェイン・ショーター・カルテットだ! 最新作『ウィズアウト・ア・ネット』のあまりの凄さに世界中のジャズ・ファンがひっくり返った直後、というタイミングでの去年のステージは、あまりのテンションの高さにわたくし言葉を失いました。80歳とはとても思えない集中力と創造力、そしてバンドをぐいぐい引っ張る統率力。即興演奏家としての実力は、未だにショーターが世界一ではないか、とさえ思ってしまうのだ。しかも今回は、昨年は参加できなかったドラムスのブライアン・ブレイドが参加して、ここ十数年不動のオリジナル・カルテットでの公演なのだから、今からわくわくそわそわしてしまう。今年のグラミー賞の「ベスト・インプロヴァイズド・ジャズ・ソロ」を、『ウィズアウト・ア・ネット』収録の「オービッツ」で受賞したショーターは、今年も「これがジャズなのだ!」という素晴らしい演奏を聴かせてくれることだろう。



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©Eishun Ikeda



「ジャズ」という言葉のくくりは、できるだけ広い方がいいと僕は思っている。ジャズはアメリカ生まれの音楽だけど、もうアメリカだけのものではないし、ニューオリンズ・ジャズもスウィングもビバップもモードもフリージャズもフュージョンもすばらしい音楽だけど、その内のどれかだけが「ジャズ」であるわけではないのだ。ストイックでピュアな音楽は美しいけど、それをも含んで雑然とした、だけどどこか優雅な音楽が「ジャズ」なのだと思う。だから、JAZZ WEEK TOKYO 2014のような、間口の広いおおらかな「ジャズ・イヴェント」が開催されるのは本当にうれしい。

そして、東京という世界有数の雑然とした都市の、渋谷という東京有数の雑然とした街の、だけど不思議に優雅な空気が流れる文化村のオーチャード・ホールという会場で、春の甘やかな空気と共にさまざまな「ジャズ」を聴くことができる、というのは、なんだかとっても素敵な体験だと思うのだ。

 

リー・リトナー&デイブ・グルーシン“ブラジル・プロジェクト”
没後20年 A.C.ジョビンに捧ぐ



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初孫、ダニエル・ジョビンも出演 
text : 中原仁

ボサノヴァのオリジネイターの一人であり、ブラジルが生んだ20世紀を代表するポピュラー音楽の作曲家、アントニオ・カルロス・ジョビンが67歳でこの世を去ったのは1994年12月8日。今年が没後20年になる。

メモリアル・イヤーにあたり、4月に東京で行なわれるコンサートが "アントニオ・カルロス・ジョビンに捧ぐ" とのサブタイトルがついた、リー・リトナー&デイブ・グルーシンのブラジル・プロジェクト。70年代後半のフュージョン黄金時代をリードした名コンビが再びチームを組んで、ジョビンにトリビュートするコンサートだ。

デイヴ・グルーシンもリー・リトナーも、昔からブラジル音楽との縁が深い。グルーシンは60年代後半、セルジオ・メンデス&ブラジル'66のアルバムのアレンジャー/コンダクターをつとめた。リトナーもキャリア初期からセルジオとの交流があり、79年にはリオ録音のリーダー作『イン・リオ』を発表した。2人の双頭リーダー作『ハーレクイン』(85年)ではイヴァン・リンスをゲストに迎えた。その後もリトナーはジョアン・ボスコやカエターノ・ヴェローゾをリーダー作のゲストに迎え、そして96年、『ツイスト・オブ・ジョビン』と題するプロジェクト・アルバムをプロデュースした。これはジョビンの訃報を受けて、その作品を多彩な歌手とミュージシャンを迎えてカヴァーしたアルバムで、グルーシンも参加していた。

今回のコンサートには、ジョビンのファミリーを代表して、初孫にあたるピアニスト/歌手のダニエル・ジョビン(73年生まれ)も出演する。歌声もピアノもお祖父さんに生き写しで、かつてはクアルテート・ジョビン=モレレンバウムのメンバーとして祖父の名曲を歌っていたが、ボサノヴァだけでなくポップスの分野でも活躍しており、昨年は渡米中から交流があった親友、久保田利伸のボサノヴァ・アルバム『Kubossa』にも参加した。

そしてゲストに日本人で唯一、ジョビンとの共演歴がある小野リサ。94年のリオ録音盤『エスペランサ』で、ジョビンの名曲「白い道」を本人との共演で録音した。ジョビンの亡き後も、長男のギタリスト、パウロとその息子、ダニエルとの共演で『ザ・ミュージック・オブ・アントニオ・カルロス・ジョビン~イパネマ』など2枚のアルバムを録音。2007年には、ジョビンの初来日公演(86年)の会場でもあった日比谷野外音楽堂で、ブラジルからパウロとダニエルを迎えてジョビンの生誕80年を祝うコンサートを行なった。その模様は昨年、日本でも公開されDVDも発売中の音楽ドキュメンタリー映画『アントニオ・カルロス・ジョビン/素晴らしきボサノヴァの世界』にも収録されている。

USA、ブラジル、日本から、多彩な役者が一堂に会してアントニオ・カルロス・ジョビンの音楽にトリビュートする。愛にあふれた、そしてジョビンが残した数々の名曲が今も瑞々しい輝きを放ち続けていることを体感できるコンサートになることだろう。

A.C.ジョビンに捧ぐ
4/5(土)  14:15開場/ 15:00開演
リー・リトナー(g)&デイブ・グルーシン(key) "ブラジル・プロジェクト"
 エイブラハム・ラボリエル(b)、ダニエル・ジョビン(pf,key,vo)他 
ゲスト:小野リサ

 

 

JAZZ WEEK TOKYO 2014
4/3(木)~6(日),14(月),15(火)
会場:Bunkamura Orchard Hall
http://jazzweektokyo.com/



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