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20世紀フォックス サーチライト映画

カテゴリ
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公開
2014/03/10   10:00
ソース
intoxicate vol.108(2014年2月20日発行号)
テキスト
text : 吉川明利(映画案内人)


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ヒッチコック/ファミリー・ツリー/ダージリン急行/マリーゴールド・ホテルで会いましょう



なんで、こんなにサーチライト映画が好きなんだろう?

映画会社のオープニング・ロゴが大好きです。これから見たかった映画が始まるんだと言う期待感に心躍る瞬間のシンボルですよね。近頃はインディペンデント・スタジオも凝ったロゴをデザイン、なかでも20世紀フォックス映画の分家ともいうべきフォックス・サーチライト・ピクチャーズは、まさにサーチライトが最初に映し出されるロゴで個性を発揮しています。今やその名前そのものが良質なアメリカ映画のブランド名にもなっている感があり、長年のサーチライト・ファンの一人として嬉しい限りです。

毎年、アカデミー賞の季節になると、どういった作品がノミネートされるのかが興味の的になりますよね。そして発表されたノミネート作品を眺め、何をチェックするかと言えば、その映画がどこの会社の製作で、日本での配給会社はどこか、というところでしょう。そんなことをしていた、この10年ほどを振り返ってみると、フォックス・サーチライト作品のノミネート数が多いような印象が強いことに気がつく。『ブラック・スワン』のノミネートを聞いた頃だったろうか、「何だよ、またサーチライトかよ!本家はどうなってるんじゃい!」と思ってしまったほどでしたからね。

手元にあるサーチライトのオスカー受賞作品リストをよく見てみると、ひとつの特徴が見えてきます。2004年のサイドウェイ』でアレクサンダー・ペインが脚色賞を獲得してから後、受賞の部門は主演、助演の演技部門と脚本、脚色が占めているという点(唯一の例外は『クレイジー・ハート』の歌曲賞)です。具体的に言うと2006年の『リトル・ミス・サンシャイン』のアラン・アーキンの助演と『ラストキング・オブ・スコットランド』のフォレスト・ウィテカーの主演の両男優賞。同じ年に同じスタジオの違う作品が、主演と助演の男優賞を占める快挙のインパクトのなんと大きかったことか!そして、2009年『クレイジー・ハート』のジェフ・ブリッジスの主演男優、2010年『ブラック・スワン』のナタリー・ポートマンの主演女優といった見事な実績。脚色は『サイドウェイ』と2011年の『ファミリー・ツリー』(これでジョージ・クルーニーにオスカー獲って欲しかったなぁ)、脚本は『リトル・ミス・サンシャイン』と『JUNO/ジュノ』(2007年)の受賞。要するにサーチライトの特徴とは、派手な映像で見せる作品ではなく、じっくりと登場人物たちの人生の一瞬を切り取る物語と、それらを演じる渋い俳優たちの、的確な演技力に支えられたものだということが、このオスカーの受賞結果にはっきり現れているではありませんか。実はそれこそが最も大切な“映画の根幹”なのです。それをさり気なく、でもリアルに見せてくれるスタジオなのです! そのリアルな人物像に、いわゆるハリウッド大作的なスターの演技は必要としていないことも見えてきます。フォレスト・ウィテカーもジェフ・ブリッジスも本来のフィールドは主演ではありません。そうしたポジションの役者たちに主演させる映画で成功してしまうのも、サーチライトならではと言えるでしょう。



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ブラック・スワン/リトル・ミス・サンシャイン/(500)日のサマー/フル・モンティ



大きな興行マーケット向きの作品ではないため未公開に終わったり、目立つ劇場公開でなかった作品も多くあるのも事実ですが、その映画が持つ“作品力”でDVDになってから注目された映画もあります。代表作は『ナポレオン・ダイナマイト』でしょう。未公開に終わったこの映画の、DVD発売当初のタイトルは『バス男』(邦画の『電車男』から頂いたのでしょうか?)でした。でもそんなハンデをものともせず、多くのアメリカ青春映画ファンの心に響いたのでした。また、描かれている物語がパーソナルな側面をもっている作品が多いため、映画ファンそれぞれに響くポイントが違っていて当然、ここが面白いですね。個人的な好みでいえば『リトル・ミス・サンシャイン』や『ファミリー・ツリー』のような“家族の再生”を描いたものが大好きです。初期の作品の家族ものでは『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』も見逃せない1作です。意外にファンがいる作品は初期では『サンキュー・スモーキング』と最近では『わたしを離さないで』(3人の若者より、シャーロット・ランプリングに釘付け!)ではないでしょうか。そして最も多くのファンを獲得した映画は『(500)日のサマー』ですね。若手NO1の実力派俳優ジョゼフ・ゴードン・レヴィットの出世作と言えるでしょう。本当にサーチライトの映画にいつも感心させられるのは、新旧の俳優それぞれの起用方法ですね。例えば“新”では『わたしを離さないで』のアンドリュー・ガーフィールド、『JUNO/ジュノ』のエレン・ペイジ。“旧”では『ブラック・スワン』のウィノナ・ライダーとバーバラ・ハーシーという具合です。このキャスティングセンスがあるから、やはりサーチライトの映画は面白いのです! 最後に、もしかしたら一番好きなサーチライト作品? を告白しましょう。『ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた』です! よろしかったら観てくださいね。