※「レコード芸術」2008年12月号～“特選盤”！

超強力盤！アルゲリッチ＆チョン・ミュンフンによる灼熱のライヴ、日本初発売！
　元々は仏グラモフォンのローカル盤で、その上エイズ撲滅のチャリティCDであることから入手が著しく困難、国内にもごく少数だけ入るには入ったものの即完売となり現状はほぼ入手不可能であった（弊社にも若干ながら入荷）。勿論レアなだけではない。1曲目は『未完成』であるが、これが凄い。しかも、これ見よがしな凄さではなく、一見何気ない風情の中から何とも言えぬ不吉な美しさが立ち上がってくるといった趣（この「何気ない異常さ」はシューベルトのキモである）。例えば第1楽章、第2楽章の両第2主題の静けさを聴くがよい。あるいは第1楽章展開部開始直後の不気味な低弦のピアニッシモによるトレモロからのクレッシェンドの表現力。ヴィオラの雄弁さ。チョン・ミュンフンの実力は分っていたつもりだが、それでもまだ認識が甘かった。そしてアルゲリッチとチョンのシューマンのピアノ協奏曲。彼女のこの曲の録音は映像も含めると当盤の初出後に出たものも含め数々存在するが、これはその中でも融通無碍に泳ぎまくっている点において随一である。アーティキュレーションはアルゲリッチ節の金太郎飴状態、テンポ伸縮自由自在、にも関わらずやり過ぎどころかとことんシューマンなのだ。このセンスにはシャッポを脱ぐ（死語）。そのアルゲリッチに負けじと対峙するチョンも見事の一語。しかも、その対峙の仕方がこれまたナイスで、伴奏を付けるだけで精一杯どころか見事に呼吸を合わせ（と言いつつさすがに危ない箇所もあるが）、その合わせ方が「売られたケンカは倍にして返す」なんて野暮さはこれっぽっちも見せずに実にスマートなのだ。その上単なる伴奏にも陥っておらず表情豊かでダイナミック。とにかく、この曲の三指に入る名演と言っても大多数の方は納得されるのではないか？これを機にこの素晴らしい演奏を1人でも多くの方に聴いて頂きたい。ちなみに、2001年12月1日パリ・シャトレ座でのライヴ。シューマンの後には興奮した聴衆の盛大なブラヴォーが入っています。（新宿店 藤原）

タワーレコード （2009/04/08）