中国を代表する映画監督、陳凱歌(チェン・カイコー)の超大作「始皇帝暗殺」。構想8年、製作費80億、製作期間3年、中国全土に亙るロケーション撮影を敢行、そして、始皇帝が住んだ巨大宮殿"咸陽宮(かんようきゅう)"を始めとする紀元前3世紀の建造物セットの完全復元・・・。未曾有の映像で描きあげる中国史上最も有名な物語の映画化である。

中国史の中でも極めてドラマチックな戦国時代、紀元前3世紀、彼岸の全中国統一(現在の中華人民共和国に至るまでの、あらゆる全中国統一の基盤がこの始皇帝によって初めて築かれた)への野望に燃え、殺戮を繰り返す新の始皇帝。後に万里の長城建設などを成し遂げる世界史最大の絶対権力者である。司馬遷の「史記」にも伝えられるとおり、この最高権力者を暗殺しようという計画が実在し、暗殺者として送り込まれた荊軻(けいか)が悲劇のヒーローとして後代まで語り継がれていくのは周知のことである。しかし映画は、同じく「史記」にたった一言書き記される超の国の徐夫人という文字に注目し、事件の鍵を握る超姫(ちょうき)という女性を作り上げた。かつて幼なじみだった始皇帝と超姫、そして暗殺者荊軻と彼女の出逢い。彼らの間に一体どんな愛憎がうごめき、何のために成功の望みのない暗殺計画に荊軻は命を懸けるのか? ここで描かれるドラマは、2000年の時空を超え、現代に生きる我々に、生とは何か、史とは何かを問い、祖国を亡くした者の悲しみをうたい、魂の奥深くに迫ってくるのである。