公開日は、2011年2月19日だった。鑑賞した直後に3月11日を迎え、 程なくして上映中止となった。冒頭の大津波のシーンは、確かに当時の状況を考えると不適切であったのかも知れないが、既に作品内容を知った者としては、これは今こそ観られるべきであろうという気持ちが強くなり、正当な評価が与えられる機会はもう無くなってしまったのかと非常に憤慨した。公開時には霊能力者が死後の世界と交通するというファンタジックな要素が大きく取り上げられて、そこにあの大津波シーンの存在が本作品のある種のイメージを決定付けてしまった。なぜ3月11日以降にこそ観られるべきと思ったか、それは現在生きている人々の、これからを描いた映画であると強く思ったからだ。クリントがこの題材を映画化に選んだ時点で、すでに我々は彼の掌の上にあった。あとは受け入れ、日々生きていこうというささやかで力強いメッセージがそこにはあった。今もう一度、観ておきたいと心から思う。
intoxicate (C)大西孝法