<マタチッチ没後40年企画>
数々の名演を遺したマタチッチ/N響による極め付きのレパートリー。1968年9月収録の、両者の唯一のセッション録音が、今SACDで鮮やかに蘇る!日本コロムビア所蔵のオリジナル・アナログ・マスターテープからのリマスタリングによる世界初SACD化!新規解説付
今なお数多くの名演が語り継がれている巨匠マタチッチとNHK交響楽団。この名コンビが1968年に録音した巨匠極め付きのレパートリー。ワーグナー音楽の真髄を描き尽くした演奏です。日本コロムビア所有のオリジナル・アナログ・マスターテープからリマスタリングを行い初SACD化。音場・音質が鮮やかに向上しています。CD層も今回のリマスタリング音源を使用しています。
とりわけ日本でも人気が高かったマタチッチ(1899/2/14-1985/1/4)が4度目の来日時にNHM交響楽団と唯一のセッション録音を行った日本コロムビア原盤の珠玉のワーグナーを、今回没後40年を機にアナログ・マスターテープに遡り、最新でマスタリングを行いました。両者のライヴ音源はいくつも発売されていますが、セッションを組んで収録されたのはこのアルバムが唯一です。マタチッチは1965年にNHK放送開始40周年記念事業としてスラヴ歌劇団に同行しての初来日時にNHK交響楽団を振って以降、亡くなる前年の1984年3月まで9回来日し、その度に日本の聴衆に多くの感銘を与えてきました。当初よりNHK交響楽団とは結び付きが強く、2度目の来日時に「名誉指揮者」の称号が贈られています(1967年)。
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タワーレコード(2025/02/21)
このアルバムは4度目の来日となった1968年9月に行われていますが、実はこの直前の8/20にプラハの春事件が勃発しました。チェコ・フィルとの関係が深いマタチッチはこの事件に抗議する形で当初のプログラムを変更し、9/12には東京文化会館でNHK交響楽団と「わが祖国」全曲を指揮しています(この時の演奏は後にALTUSレーベルで発売)。その3日後から行われたこの「ワーグナー・アルバム」は、曲は異なるとは言え当時の何らかの状況を反映しているかも知れません(この時ワーグナーは演奏会では指揮していないため、元々のプログラムにワーグナーが含まれていたか、もしくは第2回目の来日時のワーグナー演奏を受けてセッションが組まれた可能性あり。尚、マタチッチは1959年にバイロイト音楽祭で「ローエングリン」を指揮)。
ここで聴くマタチッチとの演奏は、当時のNHK交響楽団が有していたドイツ音楽を主流に置く演奏スタイルを反映しており、マタチッチらしい骨太でスケール感の大きい指揮との相乗効果により、曲毎の変化にも感応しつつ、美しい響きを奏でています。特に今回の高音質化により、マタチッチが初共演時にN響の響きを大きく評価したことが伺える響きがより蘇りました。当時の技術的な面を差し引いてもこの響きは日本のオーケストラを再評価する重要な音源のひとつと言えるでしょう。「マイスタージンガー」や「ローエングリン第3幕への前奏曲」での力強さと推進力、「ローエングリン第1幕への前奏曲」での弦楽器の美しさ、「オランダ人」や「タンホイザー」でのうねりの巧みさと抒情性は感銘を受けます。そして最後の「ジークフリート牧歌」が絶品で、編成を減らした上での響きの繊細さとこの上ない美しさは、このアルバムだけに限らず、両者の最上の音源のひとつと言って良い出来です。尚、現在は無い新宿厚生年金会館のセッション録音は残響が少なく音像も遠目ではありますが、かえって各楽器の音色や当時実際鳴っていた音が良くわかります。そこには、マタチッチの音楽性や方向性がよりはっきりと認識できる演奏がマスターに残されていました。今回の復刻では極力原音を損なわずに、最新の技術とエンジニアの経験を持ってマスタリングを行っています。
今回の復刻は日本コロムビアが厳重に保管していたオリジナルのアナログ・マスターテープより新規でハイレゾ化を行ったマスターを使用していますので、従来のCD以上の音質向上となりました。各楽器の鮮明な音色や間接音、倍音の豊かさをより感じ取れます。また、解説書は新規の解説を収録しました。さらに解説書の裏にはLPの裏面の写真もカラーで掲載しています。
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タワーレコード(2025/02/21)