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アルテュール・グリュミオー生誕100年記念特集(1921年3月21日 - 1986年10月16日)

グリュミオー

今年生誕100年を迎えたアルテュール・グリュミオーは1921年3月21日(大バッハと同じ誕生日)、ベルギー南部の都市、シャルルロワ近郊の小さな村ヴィレール・ペルワンに生まれた20世紀を代表するヴァイオリニストの一人です。ここでは彼の生涯と芸術についてご紹介いたします。

天才伝説
グリュミオーがヴァイオリンを始めたのは3歳のとき、祖父の手ほどきによるものでした。すぐに驚くほどの才能を発揮して5歳で最初のコンサートを開くまでに上達しました。6歳のとき、通常11歳から入学資格があるシャルルロワ音楽院に特例により入学。11歳でヴァイオリンとピアノの国家試験に合格しました。1933年にブリュッセル音楽院に入学すると、二つの楽器から一つを選ぶように迫られ、グリュミオーはヴァイオリンを選択。ウジューヌ・イザイ(1858~1931)の高弟、アルフレード・デュボア(1898~1949)のクラスで学びました。デュボアからは「素晴らしい教えと、親切」を受け、同時に和声学、フーガ、対位法を学び、14歳でブリュッセル文化の中核を担うアールヌーボー建築物、パレ・デ・ボザールでデビューするまでに至りました。1939年にベルギーの国内コンクールでヴュータン賞を獲得すると、師のデュボアのすすめでパリのジョルジュ・エネスコ(1881~1955)の夏期講習を受講し、ヴァイオリンと作曲を学び大きな影響を受けました。ブリュッセルに戻るとデュボアの助手となり、パレ・デ・ボザールでシャルル・ミュンシュ(1891~1968)の指揮によりメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏しました。


【参考映像】メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
グリュミオー(vn)ロザンタール指揮フランス国立放送管弦楽団(1961年)

第2次世界大戦中の苦難
1940年5月、第2次世界大戦でベルギーがナチス・ドイツに降伏。グリュミオーの才能はナチスの目にとまり、ドレスデン国立歌劇場のコンサートマスターの地位を提示されましたが、グリュミオーは拒否。その結果、家から家へ逃げてゆく逃亡生活を余儀なくされました。1944年9月にブリュッセルがイギリス軍により解放されると、戦時中イギリス国民慰問奉仕団(ENSA)の音楽監督として活動していた英EMIのプロデューサー、ウォルター・レッグ(1906~79)に見いだされ、終戦までイギリス軍のために数多くの慰問演奏を行いました。1945年2月10日には海陸空軍協会の演奏会でウォルトンのヴァイオリン協奏曲のヨーロッパ初演を行っています。

戦後の世界的な活躍
1945年6月1日、シマノフスキの「夜想曲とタランテラ」を皮切りに1947年まで約20曲(一部未刊行)を英EMIに録音した彼は、1949年、デュボアの後を継いでブリュッセル音楽院の教授に就任。1951年には初めてアメリカを訪れ、ボストン交響楽団の演奏会に出演。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番とラヴェルのツィガーヌを弾いて大喝采を浴びました。1953年にはオランダ・フィリップス(現在はデッカ・レーベルに吸収)と専属契約を結び、亡くなるまでにCDにして約70枚分もの録音を行い、これらの録音によりイザイ、デュボア直系の「フランコ=ベルギー派」(フランスとベルギーの楽派が重なりあっているため、このように呼ばれる)のヴァイオリニスト、グリュミオーの名と芸術は世界に轟くこととなりました。
また、1953年のプラード音楽祭でルーマニア出身の名ピアニスト、クララ・ハスキル(1895~1960)と出会ったことがきっかけで、彼女と伝説的なデュオ・チームを組みました。ハスキルが亡くなるまでの7年間、ふたりはヨーロッパ各地で数多くの演奏会を開き、その芸術的精華はフィリップスへのスタジオ録音と各地の放送局によるライヴ録音に残され、今なおCDにより愛好されています。


【参考映像】モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番
グリュミオー(vn)チェリビダッケ指揮デンマーク放送交響楽団

唯一の来日、栄誉に包まれた晩年
1961年4月、第4回大阪国際フェスティバルに出演するため初来日。「羽毛のようにふっくらと柔らかい音、“楽器の女王”バイオリンを心からいつくしむような演奏」(富永壮彦氏)を絶賛されました。ベルギー文化を体現する存在としての活躍が認められ、1970年には故郷ヴィレール・ペルワンの名誉村民となり、1972年にはベルギー国王ボードゥアン1世より男爵の爵位を与えられました。その後も持病の糖尿病に苦しみながら演奏や教育活動を行いましたが、1986年10月16日、心臓発作によりブリュッセルで亡くなりました。

使用楽器と奏法の秘密
グリュミオーの使用ヴァイオリンは、デビューの頃はアメリカの銀行家から1715年製ストラディヴァリウス「ティティアン」を貸与されていましたが、1957年にベルギーのルノア伯爵から貸与された1727年製ストラディヴァリウス「ジェネラル・デュポン」に切り替えました。また1971年にオランダの楽器商から1744年製のグァルネリ・デル・ジェス「ロゼ」を購入し、以後はストラディヴァリウスと併用しました。
グリュミオーの奏法で特徴的だったのは、左の二の腕から筋肉を震わせる豊かなヴィブラートでした。また左指の圧力は非常に強く、かつ右手の弓も強く張り、ボウイングにも圧力をかけて弾いていたそうです。こうした奏法がヴァイオリンの名器をこの上なく美しく鳴り響かせ、グリュミオー独特の明確で艶やかで輝くばかりの音色を作り出していました。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)

おすすめディスク

生誕100周年記念『アルテュール・グリュミオー/フィリップス録音全集』(74枚組)

2021年6月11日、良盤入荷し販売を再開いたしました。
グリュミオーのオランダ・フィリップスへの全録音を集大成したBOXです。日本のフィリップスが1994年に初めて彼の「大全集」(PHCP4901~78)を発売したときには78枚組で、ベルギー王室に納入されとことでも話題を呼びました。当時の定価は10万円でしたが、今回の輸入盤による「フィリップス録音全集」は2万円台の前半とたいへんお求めやすくなっています。また、イギリスの弦のスペシャリスト、タリー・ポッター氏の解説が日本語で読めるのも嬉しいところです。

特集ページは こちら>>>

「アルテュール・グリュミオーの芸術」生誕100周年記念アンコール・プレス 限定盤・全65タイトル

グリュミオーの芸術

全65タイトル入荷しました!1枚物、2枚物からグリュミオーの芸術に親しみたい方には、こちらの日本盤をおすすめいたします。お値段も1枚物が1,047円、2枚組が1,885円とお求めやすくなっています。

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担当者が選ぶグリュミオー名盤ベスト10

バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全集

1960~61年、ステレオ録音。同じ誕生日であることを終生意識していたバッハの名作、無伴奏ヴァイオリンのグリュミオーにとって唯一の全曲録音。バッハの自筆譜に基づいた演奏です。

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第3番, 第5番 「トルコ風」

1961年、ステレオ録音。「モーツァルト弾き」であることを世界の愛好家に印象付けた名盤です。第3番はアメリカ・デビュー時の「勝負曲」でした。2枚組のヴァイオリン協奏曲全集(UCCD-9865)も発売されています。

モーツァルト:弦楽五重奏曲第3&4番

1973年、ステレオ録音。モーツァルトの室内楽を代表する名作2曲をグリュミオーを中心としたこのアンサンブルによる鮮烈な演奏が、どこまでも明るく晴れやかな第3番と、哀切な諦念に包まれた第4番を、美しく対照的に描き分けています。。

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集(ハスキル共演)

1958年、ステレオ録音。ハスキルとグリュミオーの「黄金のデュオ」がステレオ最初期に残した記念碑的な名盤です。光(グリュミオー)と翳(ハスキル)が寄り添うような、絶妙なデュオをお楽しみください。

ヴィオッティ:ヴァイオリン協奏曲第22番

1969年、ステレオ録音。ヴィオッティのヴァイオリン協奏曲はベートーヴェンやブラームスが愛好した美しいメロディに溢れた名品。美しい音と絶妙なフレージングを聴かせるグリュミオーの演奏は理想的な名演です。

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調&ニ短調

1972年、ステレオ録音。モーツァルトの第3番と並ぶグリュミオーの「勝負曲」だったのがメンデルスゾーンのホ短調。残された3つの録音は全て名演ですが、この最後の録音ではメンデルスゾーン若書きの美しい作品、ニ短調が収められているのが魅力です。

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番&スコットランド幻想曲

1973年、ステレオ録音。ブルッフもメンデルスゾーンのホ短調同様に3つの録音がありますが、これは最後のもの。スコットランドの美しい民謡にあふれた佳曲「スコットランド幻想曲」が彼唯一の録音としてカップリングされていておすすめです。

ラロ:スペイン交響曲

1963年、ステレオ録音。スペイン情緒とフランスの洗練が融合した「スペイン交響曲」もグリュミオーの十八番の一つ。ロザンタールの指揮ともども熱く盛り上がりながらも、仕上げは極めて美しく、いまだに同曲最高の名盤として有名です。録音も鮮烈を極めています。

フランク:ヴァイオリン・ソナタ

1961年、ステレオ録音。フランクのヴァイオリン・ソナタは同時代の名ヴァイオリニスト、イザイの結婚式のために書かれましたが、イザイの孫弟子にあたるグリュミオーの録音は最もオーソドックスな名盤です。ドビュッシー、ラヴェルとフランス系の作品でまとめられているのも魅力です。

ルクー:ヴァイオリン・ソナタ

1973年、ステレオ録音。ベルギーの天才作曲家ルクーはフランク晩年の弟子でしたが、24歳の若さで亡くなりました。彼が残したヴァイオリン・ソナタは、彼の異常ともいえる感受性の鋭さ、激しい情熱、音楽的才能が結実した名作で、同じベルギーのグリュミオーが熱い共感をもって演奏しています。担当者の個人的ベストワンはこの1枚!

カテゴリ : Classical

掲載: 2021年03月21日 00:00