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ジュリアード弦楽四重奏団設立初期の1949年~1963年録音が廉価ボックス化!(15枚組)

ジュリアード弦楽四重奏団 コレクション~1949-1963 Recordings

1946年、ジュリアード音楽院の校長であった作曲家ウィリアム・シューマンの提唱により同校の教授たちにより創設された、ジュリアード弦楽四重奏団の初期録音が、CD15枚組の廉価ボックスに集成されました。戦前のヨーロッパの演奏伝統を打ち破るように、第2次大戦直後のアメリカで設立された同団は、4人のメンバーの高い技量を背景とした、感情をそぎ落としたドライで直線的な表現で世界の好楽家に衝撃を与えました。1960年代後半になり、彼らはより柔軟な演奏表現へ変化してゆきますが、このセットには1949~63年の初期録音のみで構成されているため、新即物主義の極致のようなスタイルが楽しめると同時に、当時の聴き手の驚きも追体験していただけるものと思います。

【ジュリアード弦楽四重奏団の歴史】
 第二次世界大戦後の弦楽四重奏演奏において、ジュリアード弦楽四重奏団の出現はまさにエポックメーキングな出来事でした。

 戦前の弦楽四重奏と言えば、カペー弦楽四重奏団やレナー弦楽四重奏団のように第1ヴァイオリンが技術的にも音楽的にも抜きん出ていて、第1ヴァイオリンがアンサンブルを主導し、チームの音楽性を支配することによって演奏を作り上げていました。第1ヴァイオリン奏者の名を団体に冠しているのも、そうした事情を象徴しているようです。また演奏解釈上も旋律を曲線的に捉え、テンポの緩急を多用した、情緒あふれる演奏スタイルが主流でした。

 そのような時代にジュリアード弦楽四重奏団は出現しました。1947年12月に行われたデビュー演奏会でのベルクの抒情組曲の演奏が評判を呼び、米コロムビア社(現Sony)と契約。新ウィーン楽派の作品やバルトークの弦楽四重奏曲全集を録音し、ジュリアード弦楽四重奏団の名は、1948年に開発されたばかりだった「LPレコード」という新しい録音媒体を通じて世界に広まりました(CD10~15に収録)。

 とくにバルトーク(CD13~15)は、現代では古典となったこの名曲群の初めてのLPレコードとなったもので、当時は前衛作品として認知されました。そしてジュリアードの演奏そのものも、4つの弦の技術的、音楽的均質性と、感傷を削ぎ落としたドライで直線的な表現で、世界の好楽家に衝撃を与えました。

 1961年4月には初来日し、絶賛を博します。
 「…その緊迫感に満ちたエキサイティングな演奏はまさに想像を絶する凄さだった。とりわけチェロのアダムとヴィオラのヒリアーの曲の構造を浮き彫りにするような立ち上がりのよいボウイングが印象的で、その中低音の支えに乗って、ふたつのヴァイオリンが幻想的に飛翔するという、まさにクァルテットの理想郷ともいうべき神業が実現されていた…」(幸松肇氏、RCA BVCC37328ライナーノーツより)
 「…とくにベートーヴェンは二十世紀の現代に書かれた音楽のようにひびき、おそろしい深遠を見るように芸術の未来を暗示していたと思う。(略)およそ余分な肉づけを見せない表現法は、端的に弦楽四重奏という音楽の本質を明らかにしているようだ…」(小石忠男氏「レコード名演奏家全集」昭和38年音楽之友社刊より)

 この日本公演の直前に録音されたベルクの抒情組曲も収録されています(CD8)。安定しきった技巧と精妙な合奏、鋭い感覚の冴え、そして格調高い音楽は、デビューから15年経過したこの四重奏団の表現の熟成を感じさせます。また、来日公演直後の1962年に録音されたモーツァルトの「ハイドン・セット」(CD4~6)、1963年に録音されたバルトークの弦楽四重奏曲全集(CD1~3)は、この時期のジュリアードの金字塔となる名盤です。各メンバーの響きは充実しきっており、どんなに力奏しても美観を失うことがなく、音楽の形式を歪めることがありません。

 この後、ジュリアード弦楽四重奏団は初期のドライな演奏からの脱皮をはかってゆきます。1966年の来日時、音楽評論家の佐川吉男氏によるインタビューでリーダーのロバート・マンは、高い評価を受けていた初期のスタイルに対し多分に謙遜の入った内容で、「はじめは若気の至りのロボット的な再現で終わっていたと自己批判した。」と発言しています。彼らは自分たちに貼られたレッテルを剥がし、新たなスタイルの獲得を目指した訳です。彼らの演奏に豊かなニュアンスとふっくらとした響きが感じられるようになり、スケールの大きな音楽の中には小粋とも言えるリズムが息づくようになりました。

 1964年から1967年にかけて録音したシューマンの弦楽四重奏曲全集(SC SICC-1769)はその典型例と言えるでしょう。ジュリアードのこうしたスタイルの変化は、ロマン派作品の表現を一層味わい深いものとしています。このCDではグールドと共演したピアノ四重奏曲、バーンスタインと共演したピアノ五重奏曲が聴けるのみ魅力です。1977年のモーツァルトの《ハイドン・セット》の再録音盤(SC SICC434)は、彼らの曲線的表現の総決算と言えるもので、1962年盤との違いが際立っています。ファンの間でも1962年盤と1977年盤のどちらを採るかでしばしば話題となる、ともに完成度の高い演奏となっています。

 1980年代に入り、ジュリアードの様式は終着点を迎えます。表現を細やかにするため、強弱やアゴーギグ記号の扱い、ヴィブラートの使い分けなどがいっそう自由になり、変幻自在の演奏を示すようになりました。1981年録音の3度目のバルトーク全集(SC SICC-1883)は63年盤ほどの熱はないものの、表現力は一層柔軟性をまし、説得力ではひけをとりません。また1989&95年録音のヤナーチェク&ベルク(廃盤)は「不倫」をテーマとした楽曲で固めたプログラムといい、複雑な人間心理を音で陰影細やかに表現した点といい、ジュリアードの行き着いた姿を刻印しています。

 ジュリアード弦楽四重奏団は1997年にロバート・マン(1920~ )が引退し、ジョエル・スミルノフが第1ヴァイオリンとなり、その後ニコラス・イーネットが短期間務めた後、2011年よりジュリアード音楽院現教授のジョセフ・リン(1978~ )が第1ヴァイオリンを務め、現在に至っています。(タワーレコード)

【収録曲目】
『ジュリアード弦楽四重奏団 コレクション~1949-1963 Recordings』

CD1
バルトーク
弦楽四重奏曲第1番
Rec.September 18&20,1963

弦楽四重奏曲第2番
Rec.May 21&24,1963

CD2
バルトーク
弦楽四重奏曲第3番
Rec.May 7&8,1963

弦楽四重奏曲第4番
Rec.May 15&16,1963

弦楽四重奏曲第5番
Rec.May 23-25,1963

CD3
バルトーク
弦楽四重奏曲第6番
Rec.May 10&14,1963

ベートーヴェン
弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調,Op.131
Rec.March 28 and April 1&4,1960

CD4
モーツァルト
弦楽四重奏曲第14番ト長調,K.387
Rec.May 14&16,1962

弦楽四重奏曲第15番ニ短調,K.421
Rec.May 29&31,1962

CD5
モーツァルト
弦楽四重奏曲第16番変ホ長調,K.428
Rec.May 18,1962

弦楽四重奏曲第17番変ロ長調,K.458"狩り"
Rec.May 25&29,1962

CD6
モーツァルト
弦楽四重奏曲第18番イ長調,K.464
Rec.May 16&18,1962

弦楽四重奏曲第19番ハ長調,K.465"不協和音"
Rec.May 1&2,1962

CD7
ドビュッシー
弦楽四重奏曲ト短調,Op.10
Rec.May 7&8,1959

ラヴェル
弦楽四重奏曲ヘ長調
Rec.May 18&21,1959

ウェーベルン
弦楽四重奏のための5つの楽章,Op.5
Rec.September 23,1959

弦楽四重奏のための6つのバガテル,Op.9
Rec.September 25&28,1959

CD8
シューベルト
弦楽四重奏曲第14番ニ短調,D.810"死と乙女"
Rec.February 5-6 & May 27,1959

アルバン・ベルク
抒情組曲
Rec.May 22,26&28,1959

CD9
モーツァルト
弦楽四重奏曲第19番ハ長調,K.465"狩り"
Rec.May 1,16&17,1957 (mono)

ハイドン
弦楽四重奏曲ハ長調,Op.74 No.1,HobIII/72
Rec.May 23-24,1957 (mono)

弦楽四重奏曲ト長調,Op.77 No.1,HobIII/81
Rec.May 27,1957(mono)

シューベルト
13. 弦楽四重奏曲ハ短調,D.703"断章"
Rec.February 5,1959

CD10
アルバン・ベルク
弦楽四重奏曲,Op.3
Rec.July 31,1952(mono)

エリオット・カーター
弦楽四重奏曲第2番
Rec.October 27&31,1960

ウィリアム・シューマン
弦楽四重奏曲第3番
Rec.March 28&31,1958

グレン・グールド
10. "じゃあ、フーガを書きたいの?" 4声と弦楽四重奏のための
ベンソン=ガイ(ソプラノ)
ダーリアン(メゾ・ソプラノ)
ブレッスラー(テノール)
グラム(バス)
ゴルシュマン(指揮)
Rec.December 14,1963

CD11
シェーンベルク
弦楽四重奏曲第1番ニ短調,Op.7
Rec.May 26-27,1952 (mono)

弦楽四重奏曲第2番嬰へ短調,Op.10
ウタ・グラーフ(ソプラノ)
Rec.May 3&8 and June 12,1951 (mono)

CD12
シェーンベルク
弦楽四重奏曲第3番,Op.30
Rec.June 12&13,1951 and March 21&July 30,1952 (mono)

弦楽四重奏曲第4番,Op.37
Rec.May 16&22 and July 31,1952 (mono)

CD13
バルトーク
弦楽四重奏曲第1番
Rec.May 11,1949(mono)

弦楽四重奏曲第2番
Rec.March 18&August 17,1949 (mono)

CD14
バルトーク
弦楽四重奏曲第3番
Rec.May 11,1949 (mono)

弦楽四重奏曲第4番
Rec.August 17,1949 (mono)

弦楽四重奏曲第5番
Rec.August 18,1949 (mono)

CD15
バルトーク
弦楽四重奏曲第6番
Rec.May 13,1949 (mono)

アルバン・ベルク
抒情組曲
Rec.October 16,1950 (mono)

ウェーベルン
弦楽四重奏のための5つの楽章,Op.5
Rec.August 1,1952 (mono)

【演奏】
ジュリアード弦楽四重奏団

カテゴリ : ニューリリース | タグ : ボックスセット(クラシック)

掲載: 2015年05月12日 11:00