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今ノリに乗っている若きマエストロ、坂入健司郎のマーラー:交響曲第3番ライヴ!

坂入健司郎のマーラー第3

当日のコンサート印象記
2017年1月8日(日)18時開演、ミューザ川崎シンフォニーホールにて東京ユヴェントス・フィルハーモニー第14回定期演奏会を深い感動とともに聴きました。指揮はもちろん音楽監督の坂入健司郎、プログラムは前半がブラームスの「アヴェ・マリア」とヴォルフの「妖精の歌」、後半が約100分からなるマーラーの大作、交響曲第3番ニ短調という長大なものでした。女声合唱にはオルフ祝祭合唱団が全プログラムに加わり、ヴォルフではソプラノの首藤玲奈が、マーラーではアルトの谷地畝晶子と児童合唱の中央区プロシェールジュニアコーラスが参加しました。

ブラームスの「アヴェ・マリア」ではオケの陰影深い音色美に魅せられました。これにはオーケストラの配置とひな壇の使い方も奏功していたようです。配置はいつもの通り対抗配置ながら、客席へ向けてひな壇ですり鉢状に楽員を乗せ、正面奥の壁前面にコントラバスを配置。これによりオケの中低音が良く響き、その上にしなやかなヴァイオリン群やみずみずしい木管群が映えました。続くヴォルフの「妖精の歌」、あまり耳にしない楽曲ですが愛らしい旋律とメルヘンのような色彩をもった作品で、聴き始めて瞬く間に魅了されました。ソプラノの首藤玲奈の艶やかな歌声と気品溢れる表情が美しく、合唱も彼女に引き込まれるように表情豊かな歌声と豊かなハーモニーを聴かせました。

15分の休憩後はメインのマーラーの交響曲第3番。第1楽章、約35分の長丁場、坂入健司郎はマーラーが示したこの楽章の論理的構成と壮麗な迫力、抒情的表現を見事に並立させ、多様な世界観を音楽表現で示してくれました。まず論理的構成では、曲の隅々まで緊張感を持続し、とくに打楽器群の微細な音までリズムを一貫させたことを挙げたいと思います。このリズムが、聴き手の聴取にも同様のリズムをもたらし、長大な構成の中で現時点の立ち位置が楽章中のどこにいるのか、行方不明になることなく、常に把握することに繋がりました。壮麗な迫力では息の長いクレッシェンドと、楽章中での最強音を的確に指示する指揮者と、それを技術的に可能とした各楽員の技量と努力を挙げたいと思います。これにより呈示部、展開部、コーダの極点に素晴らしい高揚と感動が生まれました。もちろんプロの一流オケに較べると、最強音でのさらなる技術的、表現的余裕が望まれますが、アマオケとしては最高水準だったと思います。抒情表現では各奏者の高い音楽性と、フレージングのしなやかさ、ハーモニーの色合いの濃さが味わい深い表情を生んでいました。オケの配置にも一言。正面奥のコントラバスの配置、その左右に2対のティンパニを配し、コントラバスの前面に木管群、その左に狩猟楽器をルーツとするホルン、その右に神聖な楽器をルーツとするトロンボーン、トランペットを配したのが、音響効果的にも楽曲内容表現的にも視覚的にも実に効果的だったと思います。

第2楽章、冒頭のオーボエの巧さ、続く弦楽器群の優美な表情と豊かなカンタービレ、思い切ってテンポを対照させたトリオの激しさと精緻さ、堪能しました。第3楽章、20分弱という長さの中で曲想が目まぐるしく移り変わる難所。舞台裏のポストホルンはかなりの好演で、楽章の情趣と特殊な音響効果をともに楽しませてくれました。オケは曲想変化に対応すべく、ソロや合奏で奮戦していました。

第4楽章、オーケストラの神秘的な前奏に導かれて、アルトの谷地畝晶子が登場。ニーチェの「ツァラトゥストラ」の一節を預言者のような厳粛さで瞑想的に歌い、会場の空気が一変しました。彼女の歌声は沈み込むような落ち着きを持ちながらも、艶やかな感触があり、聴いてきて感覚的な喜びも感じました。第5楽章、児童合唱と女声合唱が加わる愉悦的な音楽。コントラバスの背後のP席部分の下半分に児童合唱、上半分に女声合唱を配していました。

第6楽章「ゆっくりと、安らぎに満ちて、感情をこめて」、最高の名演でした。約25分間、ゆったりとしたリズムをと深い祈り、豊かなハーモニーを一貫させ、息の長いフレーズを丹念に丹念に積み重ね、感動を少しずつ高めて行き、最後は金管楽器が加わった壮麗で輝かしいクライマックスを築き上げる指揮者の素晴らしい手腕とスケールの大きな構築力、楽員全員の音楽性とチームワーク、献身的な演奏が会場に感動を湧き上がらせました。

同コンビとしては、昨年のブルックナー第8を上回る最高の名演となりました。当日はAltusの斎藤啓介さんが録音をとっていて、今回のCD発売に繋がりました。また客席には多くの音楽評論家、全国紙の記者、音楽雑誌の編集者、プロのオーケストラ関係者が聴きに来ていました。この名演を機に、坂入健司郎の活躍の場がさらに大きく広がって欲しいと思います。
(タワーレコード商品本部 板倉重雄)

【収録曲目】
(1)マーラー:交響曲第3番ニ短調
(2)ブラームス:アヴェ・マリア Op.12
(3)ヴォルフ:妖精の歌~女声合唱と管弦楽のための

坂入健司郎(指揮)東京ユヴェントス・フィルハーモニー
毛利文香(コンサートミストレス)
(1)谷地畝晶子(アルト)
(3)首藤玲奈(ソプラノ)
(1)(2)オルフ祝祭合唱団(合唱指揮:谷本善基)
(1)中央区・プリエールジュニアコーラス(合唱指揮:古橋富士雄)

録音:2017年1月8日/ミューザ川崎シンフォニーホール(ライヴ)

「流れ、抑揚、強弱などなど、大きなところをはずさないのだ。特にフィナーレは、信じられないほど美しく、深みがあった。繰り返すが、呆然とするほど美しく、感動的だったのだ。」(許 光俊)

音楽評論家、許光俊氏も絶賛。知る人ぞ知る気鋭コンビ、坂入健司郎&東京ユヴェントス・フィル!既にリリースされているブルックナーの交響曲第5番(ALTL-005)や第8番(ALTL-006)では、若々しい新鮮な好演、と思いきや巨匠然とした悠然たる大きな演奏を聴かせ、人々を大いに驚かせました。そして彼らが今回挑んだのは、管弦楽と声楽による長大な交響曲、マーラーの3 番!この大作を相手に、真に美しいところを取りこぼすことなく、圧倒的な演奏を披露。錯綜するコンテクストもくっきりと描き分けており、オーケストラの技量にもほれぼれします。終楽章の弦楽の歌はすばらしく感動的!声楽曲でまとめたプログラムも技あり。『ドイツ・レクイエム』を思わせる美しいブラームスの『アヴェ・マリア』と、ヴォルフの色彩的な音使いがまばゆい『妖精の歌』をカップリング。2017 年、新年早々に行われ鮮烈ライヴがめでたく音盤化。これは要注目です!歌詞対訳を完備した解説書も嬉しい。
(キングインターナショナル)

坂入健司郎(指揮)
1988年5月12日生まれ、神奈川県出身。慶應義塾大学経済学部卒業。これまで指揮法を小林研一郎、山本七雄、三河正典、井上道義各氏に、チェロを望月直哉氏に師事。また、モスクワ放送響音楽総監督ウラディーミル・フェドセーエフ氏、元アルメニア国立放送交響楽団音楽監督井上喜惟氏と親交が深く、指揮のアドバイスを受け、アシスタントを務めている。13 歳ではじめて指揮台に立ち、2006年慶應義塾高校ワグネル・ソサィエティ・オーケストラの正指揮者に就任。2007年3月東京芸術劇場で行なわれた定期演奏会ではチャイコフスキーの『交響曲第4番』をメインとしたプログラムで成功を収め、音楽現代2007年5月号において「クライマックスを作るのが実に上手く、白熱した名演となり未来の巨匠ぶりを存分に発揮していた。」と絶賛される。再び同誌9月号の特集「今、期待の若手指揮者に注目」では、将来を嘱望される新鋭と評された。これまで、イェルク・デームス氏、舘野泉氏、小山裕幾氏など世界的なソリストとの共演や、数多くの日本初演・世界初演の指揮を手がけ、好評を博している。

東京ユヴェントス・フィルハーモニー
2008年「慶應義塾ユースオーケストラ」という名称で、慶應義塾創立150年を記念する特別演奏会のために慶應義塾の高校生・大学生を中心として結成されたオーケストラ。総勢約100名による編成。2014年には、幅広い年齢層や出身のメンバーが集い、より広く門戸をひろげて文化活動に貢献する存在でありつづけることを願い、団体名称を「東京ユヴェントス・フィルハーモニー」に名称を変更し、より一層精力的な活動を続けている。フルーティストの小山裕幾氏をソリストに迎えた創立記念演奏会(2008年12月16日)は成功を収め、その後も、イェルク・デームス氏をソリストに迎えた第2回演奏会や、ジャン・シベリウスの日本初演を行なった第3回演奏会、舘野泉氏をソリストに迎え2曲の協奏曲を演奏した第4回演奏会など、毎回独自の演奏会を企画し、数多くの世界初演・日本初演を手がけており、各方面から好評を博している。

カテゴリ : ニューリリース

掲載: 2017年05月17日 00:00