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インタビュー

!!! 『Thr!!!er』



今度の!!!はいつもと違う! メロディーはキャッチーに、リズムはタイトに、そして曲の尺はすっきり短め!! マジでビックリの連続だよ!!!



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ジム・ショウ(シミアン・モバイル・ディスコ)がサポートした70sディスコ調の先行シングル“One Girl/One Boy”をラジオで聴いたとき、次のアルバムは!!!の最高傑作になるだろうと思った。そして全貌があきらかになったいま、その考えは確信に変わろうとしている。待望の5作目『Thr!!!er』は、メンバーの脱退や過酷なツアーですっかり疲弊していた彼らが、もう一度バンドの初期衝動を取り戻そうとした感動的な一枚だ。

「音を鳴らした瞬間に感じた雰囲気やデモのオリジナル・ヴァージョンを、ダイレクトに楽曲へ反映しようとした。これまでとの大きな違いは、制作プロセスが整理されていたことかな。多くのファンが俺たちに求めているライヴ感を、より上手く表現できたと思う。それに、今回のレコーディングはバンドとして団結力が凄く高い時期でもあったんだ」(ニック・オファー、ヴォーカル:以下同)。

!!!のライヴ・パフォーマンス力は〈フジロック〉などで幾度も証明されてきたが、スタジオ作品ではその熱気を封じ込めようとするあまり、1曲1曲が長すぎてリスナーの集中力を削いでしまっていた部分も否めない。そこでタイトな曲を集めたいと考えた彼らは、スプーンのドラマーであるジム・イーノをプロデューサーに指名。これが見事に功を奏し、オースティンにあるジム所有のスタジオで録音された本作は収録時間40分未満、実にコンパクトで無駄がない

「いくらリスペクトしているからって、20年前に黄金期を終えた人間と仕事をするつもりはなかった。その点、ジムはミュージシャンとしてもプロデューサーとしても、いまが最盛期。エキサイティングだったよ。スプーンの曲はどれもサウンドメイキングが素晴らしくて、おもしろい発見があるし、スペースが十分に与えられている。それってダンス・ミュージックにおいても大事な要素だよね」。

電子音が暴れまくる“Careful”などに顕著だが、良い意味でDJミックスやコンピレーション・アルバムのような、まとまりのなさ──これも本作の大きな特徴である。『Thr!!!er』というタイトルの由来について尋ねた際、ニックからこんな興味深い答えが返ってきた。

「当然マイケル・ジャクソンの『Thriller』は大好きだけど、俺たちは他のジャンルで『Thriller』に相応する作品は何だろう?って模索していたんだ。で、このレコードをダンス/ポップ・アルバムに対するオマージュというよりも、〈ヒット・ソングだらけのビッグなアルバム〉に対するオマージュにしようと思った。歴史的なセールスを記録してきたすべての名盤に捧げる、!!!からの恩返しでもあるのさ」。

多数の女性ヴォーカリストを招いたのは、キャッチーさや何度でもリピートしたくなる中毒性を追求するうえで必然だったのかもしれない。また、ヒップホップ的なサンプリングの手法が、生歌・生演奏に置き換えられていることにも注目。暗号のように散りばめられた元ネタを知れば知るほど、『Thr!!!er』が放つ音の魔力に引き込まれていくだろう。

「例えば“Slyd”の原型は、M/A/R/R/S “Pump Up The Volume”だよ。サンプリングをたくさん使って構築されたトラックを真似してみよう、というテーマがあったからね。ほかにはデクスターやミゲル・キャンベル、ティース、フォー・テット、ロマーレなんかもよく聴いてたな。ひとつのループを少しずつ変化させて、グルーヴを生み出していく——今回、俺たちはそんなクラブ・ミュージックのやり方に強くインスピレーションを受けたんだ」。



▼関連盤を紹介。

左から、シミアン・モバイル・ディスコの2012年作『Unpatterns』(Wichita)、スプーンの2010年作『Transference』(Merge)

 

▼!!!の作品を紹介。

左から、2001年作『!!!』(Gold Standard)、2004年作『Louden Up Now』、2007年作『Myth Takes』、2010年作『Strange Weather, Isn't It?』(すべてWarp)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年05月20日 20:30

更新: 2013年05月20日 20:30

ソース: bounce 354号(2013年4月25日発行)

インタヴュー・文/上野功平 写真/パイパー・ファーガソン

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