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インタビュー

COMEBACK MY DAUGHTERS 『Mira』



前作のムードを引き継ぎながら、自身の得意なことを積極的に採り入れることでオリジナリティーを発揮した新作。開けた感覚が効を奏した傑作です!



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これまでにPIZZA OF DEATHから4枚のオリジナル・アルバムを発表してきたCOMEBACK MY DAUGHTERSが、新メンバーに松原圭甫(ドラムス/キーボード)を迎え、新作『Mira』をコロムビアから発表する。メジャー移籍の経緯は、いっしょにやりたいと思ったディレクターがたまたまコロムビアの人だっただけ……といった感じらしいが、それだけでなく相応の背景もあるだろう。ではそれが何かと考えてみると、そこにはマムフォード&サンズに代表される、近年のインディー・フォークのムーヴメントとのリンクがあるように思う。エモ〜パワー・ポップな初期の音楽性から、徐々にフォーク〜カントリー志向を強め、前作『OUTTA HERE』がまさに〈日本発のインディー・フォーク〉といった作品だったことは記憶に新しい。そして『Mira』ではその流れも踏まえ、より自分たちらしい作品を追求したのだという。

「今回は前作ほどカントリーっぽさとかは意識せずに、そういうのからもっと派生していったというか、もうちょっとオーセンティックな、USルーツ音楽の香りがするロック・アルバムを作りたいと思ってました。前作が出来て、〈なかなか変なことをやれてるな〉っていう感じがあったのでそこも突き詰めつつ、もう5枚目なのでこれまでの作品の良かったところをできる限り客観的に見て、自分たちの得意な形で演奏できる曲や、自分たちを伝えやすい曲を作っていった感じです」(高本和英、ヴォーカル/ギター/キーボード)。

前作に引き続きNYでレコーディングが行われ、天然のリヴァーブがかかったような広がりのある音像も素晴らしい新作は、瑞々しいアップテンポのポップソングからビートルズやビーチ・ボーイズをオマージュしたナンバー、オールディーズを再解釈した曲など、高本が言うようにこれまでの彼らのいいとこ取りと言える内容だ。また、ピアノやオルガンなどの鍵盤類をはじめ、ストリングス、バンジョー、ラップスティール、木琴などが効果的に用いられ、楽曲の表情を豊かにしている。

「NYの楽器屋さんって、日本と違ってどこでもバンジョーとかラップスティールが普通に売ってて、スタジオにあるバンジョーを使う予定だったんですけど、初日に自分で買いました。でも、僕それまでギター・バンジョーしか弾いたことがなくて、ちゃんとしたものを初めて弾いたので、レコーディングで苦戦するっていう(笑)」(CHUN2/ギター)。

さらに、本作でもうひとつ注目すべき点は、NY滞在中に高本が書き上げたという“Please, Please, Please”や、戸川琢磨(ベース)による“Tornado”など、12曲中4曲が日本語詞であるということ。ここには、音楽に対する彼らの姿勢の変化が明確に表れている。

「これまではずっとファンの気持ちというか、いちばん後輩みたいな気持ちでずっと音楽をやってたんですけど、いまの洋楽と聴き違えるようなバンドとか、すごくいい若手がいっぱいいて、もう自分たちは彼らと全然違うところにいるんだなって気付いて。それが嬉しかったんです。ずっと洋楽への憧れで音楽をやってきたけど、それだけじゃないことをやろうとしてるんだなって気付けた。だったらますます違う方向にというか、自分たちの世界観をより伝えたいと考えたときに、日本語でも書いてみようと思えたんです」(高本)。

10代のロック・キッズから往年のフォーク・ファンまで、幅広い世代を視界に捕らえて、彼らはいまもみずからを更新し続けている。



▼COMEBACK MY DAUGHTERSの作品を一部紹介。
左から、2008年作『EXPerience』、2011年作『OUTTA HERE』、2012年のミニ・アルバム『Back in the Summer』(すべてPIZZA OF DEATH)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年07月22日 19:40

更新: 2013年07月22日 19:40

ソース: bounce 356号(2013年6月25日発行)

インタヴュー・文/金子厚武