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インタビュー

作品で振り返る、今のモーニング娘。の歩み!!



『One・Two・Three/The 摩天楼ショー』 zetima(2012)

記念すべき50枚目のシングルであり、道重さゆみが8代目リーダーに就任して最初のリリースでもあります(史上初の50作品オリコンTOP10入りという快挙も達成)。とはいえアニヴァーサリー的な出来に落ち着かず、EDM由来のボトムもアグレッシヴに駆動する“One・Two・Three”で新章を祝う姿勢が、つんく♂の攻める意識を感じさせます。それまでアクセント的になされていた声の加工が音像の一部として用いられているのもポイント。一方の“The 摩天楼ショー”はそれ以前の体制で一度録音されていたディスコ歌謡で、つんく♂ならではのシャープで煌びやかなファンキーさがまた格好いい。カップリングでは9期メンバーなりの解釈で妖しい熱情を発するダンス・トラック“アイサレタイノニ...”が聴きもの。

 

“⑬カラフルキャラクター” zetima(2012)

幕開けに置かれた“One・Two・Three”をはじめ、ここまでのシングル曲を計4つ含む13枚目のアルバム。昂揚感に溢れたトランシーな凱歌“What's Up? 愛はどうなのよ〜”という屈指の名曲をはじめ、以降も道重のテーマソング的に重宝されていくキュートなテクノ・ポップのソロ曲“ラララのピピピ”、9・10期メン8名それぞれの声がイキイキと聴こえてくる鬼ファンキーな“笑って!YOU”など、表題通りにキャラ立ちのくっきりした一枚です。なお、本作を引っ提げて敢行した秋ツアー〈モーニング娘。誕生15周年記念コンサートツアー2012秋 カラフルキャラクター〉では、公開ゲネプロの日に11期メンバーとして小田さくらの加入がサプライズで発表され、結果的にこの10人では唯一のアルバムということに。

 

“ワクテカ Take a chance” zetima(2012)

加入が告げられた小田さくらは未参加な51枚目のシングル。つんく♂一流のネーミングセンスも凄いですが、複雑なダンス・フォーメーションという特性がここから明確に押し出されたという点でも意義深い一曲でしょう。カップリング群では、奥ゆかしい歌詞にもグッとくる“Loveイノベーション”、譜久村・石田のデュオ曲“大好き100万点”というつんく♂らしい青春ソング2態が、それぞれ河野伸、高橋諭一という名アレンジャーの起用もあって昔からのファンにもグッとくる甘酸っぱさ。なお、秋ツアー〈モーニング娘。誕生15周年記念コンサートツアー2012秋 カラフルキャラクター〉の中野サンプラザ公演にて、田中れいなが翌春のツアーファイナルをもって卒業することを発表。

 

“Help me!!” zetima(2013)

小田さくらが初参加し、3年8か月ぶりにオリコン首位を獲得したことも話題になった52枚目のシングル。テーマ性のあるキャッチーなフォーメーションそのままに輪郭が掴みやすい疾走感のある展開で、切迫したストリングスもドラマティックな盛り上がりに寄与した最高のダンス・トラックです。飯窪のへっぽこなラップが最高なダンスホール風の“私のでっかい花”、道重マナーに譜久村を改めて引きずり込むユーロ調の“哀愁ロマンティック”、鈴木の快活な歌声が良い“なには友あれ!”などカップリングの粒揃いぶりも過去最高級ななか、凄まじいハッピーエンド感が降ってくる“Happy大作戦”から滲み出すポジティヴィティーはこのグループの本質的な魅力を体現しているのでは、とか。

 

『ブレインストーミング/君さえ居れば何も要らない』 zetima(2013)

田中れいなのラスト参加となった両A面シングルで、11年ぶりに2作連続でチャートを制することに。“ブレインストーミング”は“One・Two・Three”以降のダイナミズムに明快な緩急を加えた親しみやすい仕上がりとなり、小島よしおへのオマージュ的な振付けもユニークでした。田中の声がストレートに響く“君さえ居れば何も要らない”は、レイヴ的な声ネタ使いも効いたアッパーなトラックに、かつての“Only you”を想起させるメッセージも忍ばせているかのよう。カップリングでは田中のソロ・ナンバー“Rockの定義”はやはりチェックしておきたいですが、全員歌唱による色気づいたアップ・チューン“A B C D E-cha E-chaしたい”の何とも言えない気恥ずかしさもまた最高に必聴であります。

 

「モーニング娘。コンサートツアー2013春 ミチシゲ☆イレブンSOUL 〜田中れいな卒業記念日〜 in日本武道館」 zetima(2013)

タイトル通り春ツアーのファイナルで、5月21日に武道館で行われた田中れいなの卒業公演を記録したライヴDVD/Blu-ray。前年のアルバム曲やツアー過程で投入されてきたシングル群を軸に据えつつ、同期愛を象徴する“大きい瞳”をはじめ、過去曲にもパートを割いたセットは6期メン2名の10年に渡る歩みを駆け足で振り返るかのようでもあります(“気まぐれプリンセス”や“みかん”での大歓声が印象的!)。同時に“笑顔 YES ヌード”や“Only you”などを現メンバーの歌唱で楽しむこともでき、特に鞘師や小田の声質と往時の楽曲のマッチングの良さも窺えるのではないでしょうか。アンコールでは初のソロ歌唱曲だった“キラキラ冬のシャイニーG”(2006年)を田中が歌い、道重・田中の名コンビが涙と笑いを自在に操る卒業セレモニーを経て、本当のラストは6期メンのデビュー曲“シャボン玉”(2003年)! これは無条件で必見です!


カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年08月28日 18:00

更新: 2013年08月28日 18:00

ソース: bounce 358号(2013年8月25日発行)

文/出嶌孝次