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インタビュー

Plastic Tree “瞳孔”



Plastic Tree



[ interview ]

メジャー・デビュー15周年記念となった昨年のフル・アルバム『インク』から約9か月、Plastic Treeがニュー・シングル“瞳孔”を完成させた。突進力のあるバンド・サウンドからふと時間軸が歪むようにアブストラクトな音像へと切り替わる表題曲、アンニュイに浮遊するギター・サウンドのなかでセンシティヴな歌が紡がれる“時間坂”、人力の演奏でプラスティックな質感を演出した“アイレン”――作詞/作曲に4人全員体制で臨んだ本作のなかでは、自身の原点を見つめ直したうえで最高の〈現在〉を提示した『インク』以降だからこその音が鳴っている。そんな各曲について、有村竜太朗(ヴォーカル/ギター)に話を訊いた。



曲に引っ張り出される言葉



有村竜太朗
有村竜太朗

――アルバム『インク』のツアーが3月に終わって。そこからどう過ごしていらっしゃいました?

「ずっと曲作りみたいな感じでしたね。スケジュールがちょっと空くので、〈いまのうちにちょっと曲を書こうよ〉って定期的に集まって。あとはファンクラブ・ライヴとか。わりと潜った活動でしたね」

――今回の“瞳孔”は、そのなかで出来た曲?

「(ベースの長谷川)正君が作ったデモは前からありました。それを聴き直したら、〈この曲、メロディーがいいよね〉〈いまやってみたいよね〉っていう話になって作りはじめましたね」

――シャープなギター・リフや攻撃的なベースラインでタイトなバンド・サウンドを聴かせつつ、ちょうど中盤あたりでPlastic Treeらしい浮遊感、アブストラクトな音像にふっと切り替わっていくという……。

「まあ、〈らしい〉曲になったなって感じですね」

――最初は弾き語りみたいなところから始まってるんですか?

「確か、正君が俺ん家で作ったんですよね。〈こういうビートの曲作りたいよね〉って感じだったと思うんです、はじめは。それを流しながらベースラインとメロディーが出来て……だからまあ、元はベースの弾き語りみたいなものですかね(笑)」

――そこから全員でアレンジを。

「そうですね。丁寧に作った印象がありますね。ほかの曲と同時進行だったから、1か月ぐらいかかったかも」

――1曲完成してから次、っていうわけではないんですね。

「ギリギリまでほかの曲と同時に作ってますね。曲が多くて、どの曲がいまいちばんやりたい曲かわかんないから」

――待機している曲が、そんなにあるんですね。

「今回に関してはあったんですね。だからどの曲も同じような感じでやってって」

――全員で集まってからの作業というのは、こういうフレーズを入れたいよね、といった話し合いをしながら?

「弾いちゃったほうが早いんで、音を出しますね。メロディーも浮かんだものがあったらいくつも録って、あとから聴き直して、そのメロディーに反応してくれる人がいたら、これがいいのか、って。だから特に話し合いとかもないですね。音飾だとかは録りに入ってから変わっていったり」

――録りに入ってからなんですね。

「各自、ある程度は作ってきますけど、でもあるんですよね……レコーディングの最後までわかんないよね、みたいなのが。特に音飾関係はその場のノリというのも結構あって、ナカちゃん(ナカヤマアキラ、ギター)と正君がそういうのを二人でやってますね」

――その場で音を作って。

「うん、みんなやりますね。ドラムも録りのアタマから全員集まって、歌入れが終わるまでみんないる。全パートを全員で判断しますね。だから録りも、他のパートで俺は関係ないから行かないっていうのはないですね」

――レコーディングで曲が相当変わることってあります?

「うん、曲によっては。“瞳孔”は変わってないですけど。あっ、でも真ん中のとこは……」

――アブストラクトになる部分?

「あのへんは結構レコーディングで変わりましたね。いちばん現場主義みたいなところが出たところかなと思います」

――詞は竜太朗さんが書かれてますが、これは曲ありきで書かれてますね? 〈触れない夢に瞳孔が開く 瞬きのちいさな闇に君が/ゆらめいて きらめいて いつだって嗚呼 移り込む 瞞(まやかし)〉といったサビの部分あたりは特にですが、音と呼応しているように思います。

「そうですね。曲に引っ張り出される言葉を素直に出していった感じですね。なんか、瞬きしてるようなイメージが自分の勝手な解釈としてあって、それを取っ掛かりに歌詞を書こう、みたいな感じだったと思うんですけど。そこから何となく浮かんだものを芋づる式に出していって。これはすごく曲に寄ってる歌詞だと思うんです。曲のアレンジのひとつというか、フレーズを付けていくような感じで書いてましたね、音楽的な感じで。だからあまり感情的じゃないんですよね」

――連鎖的なイメージを淡々と言葉にして連ねていった感じ?

「そう、淡々と。根っこに漠然と自分が普段から思ってる観念的なところは出てると思うんですけど、ストーリー立ててはいなくて」

――先ほど〈音楽的〉に詞を書いた、っておっしゃってましたけど、そういうことはよくあるんですか?

「ありますね。俺、基本的に曲ありきで書くことが多いので。メロディーも自分から出てるときに関してはまた違うんですけど、だから、だいたい2パターンですね。メロディーにすごく感情が動かされちゃって、もう自分が具体的に出ちゃうパターンと、どこかぼんやりしてて、ポツポツ散文的にいっちゃうときと。“瞳孔”はすごく散文的に、パッて書いた感じなんですよね」

――書き上がるまで早かった?

「早いほうだったと思います」

――ときどき、すごく悩んでるときもありますよね。

「そうですね……ただ、今回は出過ぎちゃって(笑)」

――言葉が?

「そう(笑)。どんどんどんどん、曲のイメージが日ごとに変わっちゃうんですよ。これはマズイな、収集付かないや、ってときが一回、この曲ではあったんですけど。言葉が出過ぎちゃってもなんでも、どうせ締め切りのギリギリまで悩むのが常ですね(苦笑)」


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掲載: 2013年09月04日 18:01

更新: 2013年09月04日 18:01

インタヴュー・文/土田真弓