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インタビュー

YeYe 『HUE CIRCLE』



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中国語で〈おじいちゃん〉という名前を持つシンガー・ソングライター、YeYe(ィエィエ)がCDデビューしたのは2011年のこと。すべての楽器を自分一人で演奏し、セルフ・プロデュースで作り上げた初作『朝を開けだして、夜をとじるまで』は〈CDショップ大賞〉でニューブラッド賞を受賞するなど話題を呼んで、軽やかに最初の一歩を踏み出した。そんな彼女が、このたびニュー・アルバム『HUE CIRCLE』を完成。ここから聴こえてくるのは、前作以上にカラフルで、そして力強さを増した歌だ。

「前作は全部一人でやったので、とにかく作り上げるのにいっぱいいっぱいでしたね。その後いろんな音楽に触れる機会が増えたことで、特にアレンジを意識するようになりました。楽器について考えるというよりも、コーラスやハーモニーのアレンジをいろいろ考えて。もともと、流れている曲に勝手にコーラスを付けて歌ったりするのが好きだったんです」。

そうした新しいチャレンジの成果は、「スフィアン・スティーヴンスとシー・アンド・ヒムを足して2で割ったようなイメージで作った」というオープニング曲“パレード”にはっきりと表れている。さらに本作では、彼女を助ける仲間たちの存在も大きい。井上陽介(Turntable Films)をはじめ、これまでライヴを通じてサポートしてきたミュージシャンが制作に参加。しっかりとしたバンド・アンサンブルを中心に据えることで、アルバムに躍動感と奥行きが生まれている。

「参加してくれたのは気心の知れた仲間たちなので、すごく楽しいレコーディングだったんです。ストイックに一人でやっていた前作とは大違い。レコーディングを歴史ある旅館でやったり、エンジニアの田辺玄さん(WATER WATER CAMEL)が住んでいる山梨でやったり、すごくリラックスしながら録ることができました」。

サポート・メンバーは彼女の頭に浮かんだサウンドのヴィジョンを具体的なものにしていった。例えば、曲の後半からフィードバック・ノイズがスペイシーな音響空間を生み出していく“プログレ”もそのひとつだ。

「この曲の後半は、自分のなかではドロドロの排水溝みたいな風景が浮かんでいたんです。それを説明すると、井上さんがエフェクターをいくつか使ってギターを弾いてくれたんですが、それがイメージにぴったりで。他の曲も、自分では演奏できないけど、そうやってイメージをみんなに伝えることで音を完成させていきました。だから、アレンジ面ではサポート・メンバーの存在が大きいですね」。

バンドと共に作り上げた曲がある一方で、アルバムの後半には自身の弾き語りナンバーも並んでいる。なかでもエレキ・ギターを弾きながら歌った“ハイ、ディア、ペネロピ”は、ちょっとハードボイルドな雰囲気が漂っているけれど、彼女がめざしたのは〈マシュマロmeetsハバネロ〉。「甘いのと激辛なのが出会ったような歌を作りたかったんです。だから歌声はマシュマロみたいに甘くて優しいんですけど、ギターは辛めでギュワンギュワン鳴ってて、感情が波打っているんですよね」と楽しそうに微笑んだ。

最後にアルバムのタイトルについて尋ねると、「〈色相環〉っていう意味なんですけど、それは色のグラデーションのことで。アルバムにはいろんな色の曲を入れたかったんです」と答えてくれたが、YeYeと仲間たちの色が混ざり合って生まれた『HUE CIRCLE』は、リスナーの心にさまざまなイメージを描き出してくれるに違いない。

「前作のほうが緻密に出来ているとは思うんですけど、今回はみんなで作り上げたのですごく人間味のあるアルバムになったと思います。ちょっと触ると生温かいくらいに(笑)」。



PROFILE/YeYe


89年、滋賀生まれのシンガー・ソングライター。学生時代から京都を中心に活動し、2011年にファースト・アルバム『朝を開けだして、夜をとじるまで』をリリース。2012年の〈CDショップ大賞〉では同作でニューブラッド賞を受賞。同年に後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)のソロ曲“LOST”をはじめ、古川本舗“family”に永野亮“あらしのよる”、今年に入ってSAKANAMON“架空の色彩”やjizue“journal”などにゲスト・ヴォーカルとして参加。さらに数々のCMソングも提供するなど活動の幅を広げる。4月にライヴ会場/店舗限定でEP『ハウスウォーミング』を発表。このたびニュー・アルバム『HUE CIRCLE』(RALLYE)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年10月24日 18:10

更新: 2013年10月24日 18:10

ソース: bounce 359号(2013年9月25日発行)

インタヴュー・文/村尾泰郎