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インタビュー

MACKA-CHIN 『INCOMPLETENESS THEOREM』



見てくれじゃないカッコ良さ! 音と言葉の奇想を振りかざしてきた才人が、気鋭のチームにビートを託し、劇的進化をマイクで綴る!



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「ソロに関しては〈人のトラックで歌うのはアーティストじゃない〉くらいに思ってたから、時を経ていまこういうことができるようになった自分に驚くし、それは一つの成長かもしれないですね」。

ソロ作としては初めてプロデュースを外部に委ねた新作『INCOMPLETENESS THEOREM』について、そう口を開いたMACKA-CHIN。NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの活動とは別に、シーンの流れは我関せずと、彼はみずから欲するソロ・ワークをマイペースに極めてきた。DJ ZKAとDJ MARKから成るGRUNTERZにビート制作を委ねたとはいえ、今回もそこにはMACKA-CHIN自身の明確な意志と、GRUNTERZの2人への大いなるエールがある。

「いまで言うとベース・ミュージックだったりEDMだったり、音楽には流行りがつきものだけど、自分が最初に影響受けたヒップホップはサンプリング・ミュージックの時代(のもの)。GRUNTERZがいまの時代に流されずにサンプリング・ミュージックのスタイルでやってることに共感したし、自分の芯、スタイルをしっかり持ってる彼らのような人たちがいま日本語ラップに必要だと思う」。

過去にKGE the SHADOWMENらの楽曲を手掛け、自身のレーベル=THINK BIG INCからアナログも発表しているGRUNTERZだが、アルバム一枚のフル・プロデュースは初めてのことだ。

「雲の上の存在と思っていた方なので、最初にアルバムの話をもらったときはプレッシャーもありました」(DJ MARK)。

「サンプリング・ソースを聴いて浮かんだものがトラックになってくスタイルで、正直、作ってる時にこういうのが作りたいっていうのはなかったです」(DJ ZKA)。

全編を通じ、MACKA-CHINみずから「ドラマティックでロマンティック」と評するサウンドで固められた本作において、社会のシステムに話を向ける“憎しみ(悲しみの挽歌)”や、日本語ラップ・シーンに言葉を浴びせた“ゴミ箱を空にする”など、アルバム冒頭の“PANAIPANAI(劇的進化)”で繰り返される〈街は変わる今何を思う?〉という一節に呼応したともいうべきトピックは欠かせないものだ。さらに、下町の風景と共に地元意識を映した“SODACHIKONOMACHI”や〈全てのリンクした人にエールを送るぜ〉と歌う“TELEPATHY(五合目で会いましょう)”は、彼の長いキャリアに照らしてみればおのずと意味を増す。アルバム中唯一ユーモラスで、アッパーなムードに包まれた“アラフォーのテーマ”なども加え、音楽をぐっと身近に引き寄せるその世界は、(豪華な車をあしらった数多くのヒップホップ・アルバムのジャケとは真逆な)実在の会社のライトバンにGRUNTERZらと乗り込んだジャケットからも窺えるだろう。

「気付けば現場でもいちばん上の世代だし、カッコつけてたら“アラフォーのテーマ”なんか歌わないよね。歳とった自分を隠して現役感を出したいと思うから。ジャケにしても〈だっせえ〉と思うかもしれないけど、見てくれやファッションじゃないじゃんって言いたいし、音楽が好きで感謝してるって意味も含めて、心を開いて生まれた信頼関係、人間関係を作品に落とし込めたのはデカイですね」。

来年にはFragment主宰の術ノ穴から、MC勢をフィーチャーしたプロデュース・アルバムもリリースを予定しているというMACKA-CHIN。自身の足元を見つめた今回の『INCOMPLETENESS THEOREM』に続き、そちらではまったく違うヴェクトルで攻めの姿勢を見せてくれることだろう。



▼GRUNTERZのプロデュース曲を含む作品を一部紹介。
左から、JBMの2013年作『BUMP vol.2』(BANG STAYSTONED)、MEGA-Gの2013年作『JUSWANNA IS DEAD REMIX』(BOOTBANG)、GISSHERの2012年作『WHITE LINE』(FULL BLAST CO.)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年11月19日 21:35

更新: 2013年11月19日 21:35

ソース: bounce 360号(2013年10月25日発行)

インタヴュー・文/一ノ木裕之

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