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インタビュー

黒いラジオから広がる世界



本人の意思通りにグラミーでも〈最優秀R&B部門〉を受賞した『Black Radio』する前から、ボーダーを好き勝手に跨いだり書き換えたりするグラスパーの試みは外部活動で磨かれてきました。それはヘヴィーで活動していたケイシー・ベンジャミンら他の構成員にとっても同様です。ここではジャズとR&B両方のファンにテイスティングしていただくべく、各人がRGEの外で関わってきた無条件で素晴らしい作品の一部をご紹介しましょう。



左から、ロバート・グラスパー・エクスペリメントの2012年作『Black Radio』、同年のリミックスEP『Black Radio Recovered: The Remix EP』(共にBlue Note)、ヘヴィーの2009年作『First Sessions』(Kindred Spirits)

 

 



DERRICK HODGE 『Live Today』 Blue Note(2013)

RGE加入前からアクシス周辺でアンソニー・ハミルトンらと仕事をしてきたフィリー出身ベーシスト。この初リーダー作ではマルチな才も垣間見せつつ、アンサンブル重視で上品なヴァイブを醸造している。RGE仲間はもちろん、旧知のジェイムズ・ポイザーやコモンも参加。

 

LIONEL LOUEKE 『Heritage』 Blue Note(2012)

ハービー・ハンコックの秘蔵っ子で、デリックと同じテレンス・ブランチャード門下にもいたギタリスト/ヴォーカリスト。このブルー・ノートでの3作目はグラスパーが指揮し、その縁でグレッチェン・パーラトも動員。デリックを含むトリオ演奏を基調にピアノでも参加している。

 

BILAL 『A Love Surreal』 Purpose/eOne(2013)

『Black Radio 2』には名前がないものの、ジャズを学んでいたNYでグラスパーと知り合い、双方のデビュー時からほぼ全作に互いを招き合ってきたビラル。本作ではRGEの延長線上にある“Butterfly”を共作/共演し、美意識の共有ぶりを窺わせる。別曲ではデリックがベース演奏。

 

MYRON 『Myron & The Works』 Moja(2008)

あまり知られてないので改めて紹介。オハイオの生んだ孤高のR&Bシンガーが、ミシェル・ンデゲオチェロ(ベース)にチャールズ・ヘインズ(ドラムス)、そしてグラスパーとのセッションで作り上げたネオ・ソウルの名盤だ。本来の意味でジャジー、そして真に有機的な音の会話。

 

JOSE JAMES 『No Beginning No End』 Blue Note(2013)

ピノ・パラディーノにプロデュースを任せた意欲的なブルー・ノート移籍作。レーベルメイトになったグラスパーが共作者となった“Vanguard”では心地良く鍵盤を歌声に絡ませている。そもそもネオ・ソウル的な聴き方の受容を前提とした作りはRGEにも通じるところ。

 

JOY DENALANE 『Maureen』 Nesola(2011)

ドイツ屈指のソウル姫がフィリー勢とさらに接近して作り上げた大傑作。スティーヴ・マッキーを中心にラリー・ゴールドやビラルも名を連ねるなか、グラスパーはヒートウェイヴ使いの“Happiness”で鍵盤を披露している。翌年には英語ヴァージョンも出ているのでぜひ。

 

TERRACE MARTIN 『3Chordfold』 Empire(2013)

ミックステープで騒がれる前はニガラッチの懐刀として名を馳せたマルチ演奏家。グラスパーは1曲でローズを弾き、終曲の“Gone”ではプロデュースとピアノ演奏を担当。その後の隠しトラック(MJカヴァー)でテラス自身がヴォコーダーを駆使してRGE化するのもおもしろい。

 

ABIAH 『Life As A Ballad』 Madoh(2012)

グラスパーの従兄弟だという彼は、かつてジェレマイアの名で知られたNYのシンガー・ソングライター。キース・ウィッティやユリシーズ・オーウェンスと並んでグラスパーも全曲の演奏に参加。絶品の歌唱が描くアコースティックなバラードに簡素なバッキングで彩りを添える。

 

BLACK MILK 『No Poison No Paradise』 Fat Beats(2013)

J・ディラのセンスを継ぐデトロイトのMC兼ビートメイカー。RGE“Letter To Hermione”のリミックスにラップで招かれた縁か、この新作にはグラスパーを招聘。暖色のビートで鍵盤をもてなす“Sonny Jr.(Dreams)”のドープさにはディラっ子のグラスパーも感涙?

 

DIANNE REEVES 『Beautiful Life』 Concord(2013)

R&Bファンにも聴いてほしいジャズ。エスペランサやレイラ・ハサウェイ、故ジョージ・デュークらが大挙参加したヴェテラン・シンガーの話題作だ。グラスパーはフリートウッド・マックのカヴァー“Dreams”で切実な歌唱に寄り添うようなタッチを披露している。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年10月23日 17:59

更新: 2013年10月23日 17:59

ソース: bounce 360号(2013年10月25日発行)

ディスクガイド/出嶌孝次

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