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インタビュー

INTERVIEW(2)――現在進行形の自分たちを見せたかった



現在進行形の自分たちを見せたかった



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――活動休止から1年後、2012年1月に下北沢251で復活ライヴがありました。ここに至るまではどういった流れだったんですか?

「これは自分たち的にもイレギュラーだったというか、まさかこんなに早く復活することになるとは思ってなかったんです(笑)」

――1月にライヴをしてるってことは、そのもうちょっと前から動き出してたわけですもんね。

「いや、全然動いてなくて、急に決まったんです。まあ、復活は依田(達義、ヴォーカル)次第だったところはあって。やっぱり彼はフロントに立つ人間なんで、いちばん体力的に削れちゃってたんですよね。療養期間というか、そういう時間も必要だったんです。でも久しぶりに会ったときに、依田がいちばん変わってて。たまたま依田と吉伊(泉田吉伊、ギター)と俺の3人でいっしょにご飯を食べに行く機会があって、バンド復活とかそういう具体的な話をするつもりはみんななかったと思うんですけど、〈やっぱ帰りたくなるんだよね〉みたいなことを3人がそれとなく言いはじめたんです。〈だったら、一回やってみる?〉みたいな。準備期間があったわけじゃなくて、急にバタバタし出して、まさか新作を出すことになるなんてそのときは全然考えてもなかったし」

――でも、ヒデヲさんのなかにも〈いつか帰りたい〉っていう思いはあったわけですよね?

「そうですね。依田と吉伊と僕で、いまオリジナル・メンバーは3人しか残ってないんですけど、このトライアングルが気持ちいいっていうのはあったんで。ただ、休止前までは自分たちの衝動で動いてたんですけど、再始動後は周りのみんなに突き動かされてここまで来たっていう部分がいちばん違うんです。再始動を発表したら、〈待ってたよ〉って多くの方から声をかけてもらったり、イヴェントとか対バンの誘いもいっぱいいただいたんですよね。ものすごい知名度があったわけじゃないのに、こんなに応援してくれてた人たちがいて、ちょっとは爪痕残せてたんだなって思うとすごく嬉しいし、いまはピースな雰囲気で活動できてる感じがあります」

――前だけを見て突っ走ってきたけど、ふと立ち止まって周りを見渡したら、仲間がいっぱいいたっていう……いいのかな、FOXのインタヴューでこんないい話して(笑)。

「でも、そうなんですよね(笑)。それを知ったことで原点回帰というか、もう一回立ち直って、みんなに新しいものを届けたいという気持ちになりました。ステージに立ってるわけだから、過去の産物だけじゃダメだっていうのは感じてたし、ちゃんと現在進行形の部分を見せたくて。それでレコーディングに入っていくんですけど……まあ、そこからが長かったですね(笑)」

――2012年の復活ライヴから数えると、実際に新作が届くまでには2年弱を要したわけですが、これはそれまでハイペースで制作をしてきたぶん、今度はじっくり腰を据えて制作をしようと思ったということなのか、それとも結果的に時間がかかってしまったのか、どちらだったのでしょうか?

「ぶっちゃけて言えば、作りはじめて半年ぐらいでだいたい形が見えていたんですけど、それを一回ゼロにしたんですよ。半年っていうのもFOXとしては十分長い制作期間なんですけど、いちアーティストとしてこうしたいっていう欲求がどんどん出てきて、それをパンパンに詰めすぎちゃって、ふと聴いたときにちょっと違うなと。まだ裸になり切れてない、後ろ髪引かれる部分が残ってて、自分たちっぽくないと感じたんです。その〈自分たちっぽい〉っていうのが何なのかいまも確かにはわかってないんですけど、感覚的に違う、もっと削ぎ落とせるんじゃないかと」

――平たく言えば、もっとカッコイイものができるんじゃないか?って思ったと?

「いや、カッコ良くしたいっていう衝動だったら前のままでも良かったと思うんですけど、もっと裸になれるんじゃないかと。こう、血が沸いてる感じ、肉が躍る感じを詰め込みたかったんです。それを最大限表現したいと考えたときに、余分な音が聴こえてきちゃって。これいらない、これもいらない……ってやっていくうちに、〈もう一回録らない?〉となったんです。そう決めてからの録りは速かったんですけど、今度はミックスとマスタリングに時間がかかって、特にミックスは超長かったですね。まあ、よく聴いたら音割れてるし、時代と逆行しちゃってますけど(笑)」

――でも、それってすごく大事なところで、いまはギターの音とかがどれもいっしょになってるものが多くて、歌が入るまでバンドの区別がつかないことがよくあるんですよね。だから、時代どうこう関係なく、音に記名性があるっていうのは、すごく重要だと思う。

「いろんな人に聴いてもらったら〈変わってないね〉って言われて、実はそれが欲しかった。本来ならバンドは変わっていかないといけないと思うんですけど、逆に原点回帰ってすごく難しいんです。進むことよりも戻ることのほうが難しいなと、今回改めて痛感しました。別にダサくても良くて、そこにいろんな飾りを付けちゃったら本当の意味での初期衝動にはならないと思ったんです。俺たちはこれしかできない、このバンドはこうなんだっていうのを出したくて、余分なものを全部削ぎ落した結果、こうなってしまったっていう(笑)。普通1曲目とかは〈試聴機で聴かれるから〉みたいなことを考えますけど、訳わかんないシャウトで始まってますからね(笑)」

――その1曲目が“INTRO”で、2曲目の“笑う世界”も2分弱だから、イントロが2曲あるようなもんですよね(笑)。

「しかも、〈FOX LOCO PHANTOMです〉とか言っちゃってますからね(笑)。なにバンド名言ってんだって話ですけど、でもそれが自分たちの培ってきたもの。つまり、結局はライヴなんです。いわゆるライヴ盤ではないですけど、これまで築き上げてきた時間をライヴ盤的に表現してみた感じだなと思うんですよね」



カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2013年12月18日 18:00

更新: 2013年12月18日 18:00

インタヴュー・文/金子厚武