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インタビュー

So'Fly 『Love, Hurts, Tears』



これまで以上に2人が密な制作体制で臨んだことで、よりユニットのカラーを打ち出した久々の新作。いまの季節らしい仕上がりです!



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So'Fly復活——そう形容していいだろう。MCと楽曲制作を担うGIORGIO CANCEMIは、ソロ・プロジェクトのNERDHEADやプロデュース・ワークを通じて新たなサウンドをコンスタントに発信し続けてきたものの、彼の活動母体となるこのユニットは久しく表立った動きがなかった。だが、ついに新作『Love, Hurts, Tears』が完成。彼らにとって、実に5年ぶりのオリジナル・アルバムである。

「この5年間もSo'Flyとして曲は作っていたんですけど、なかなか方向性が定まらなかったんです。でも今年に入ったあたりから〈求められているもの〉とか〈So'Flyらしさ〉を考えずに、自分たちの好きなものを作ればいいんだって意識を切り替えた。今回はスタッフとか第三者の意見がほとんど入っていなくて、メンバー2人だけですべてを判断してるんです。そうやって完成させたアルバムですね」(GIORGIO CANCEMI、MC)。

「だから、すごく密にやり取りしましたし、これまででいちばん制作の部分に自分が関わることができたと思います。どう歌うべきかGIORGIOさんにガンガン訊いたり、逆にそういったことを丸投げされて考えたり」(TOKO、ヴォーカル)。

先行配信された“REALLY INTO U”は90年代R&B仕様のアーバンでメロウなナンバー。初期のSo'Flyを現代的にアップデートしたようなサウンドが、再始動の導入部として的確に機能している。

「ニッキー・ミナージュにしてもLMFAOにしても、音を通して徹底してパーティーをやってる。そういうパーティー感を自分なりに出したら、青春時代の90年代的なサウンドになったんです」(GIORGIO)。

そんなGIORGIOが求めていたというパーティー感覚がアルバムの前半ではストレートに打ち出されている。EDMマナーの“U OWE ME TONIGHT”、現行のUSヒップホップに則したドープなビートを轟かせる“オートマチック”——とことんアッパーに振り切れたサウンドが痛快だ。

「以前はこういうコアな曲とメロディアスな曲とを分けて考えてたんですが、いまのリスナーさんはどちらも分け隔てなく聴いていると思うんです。だから今回、そのへんは区別せずに出して」(GIORGIO)。

アルバム前半がパーティー・サイドなら、後半はメロウ・サイド。冬らしい凛としたバラード“コエヲキカセテ”をはじめ、美しいメロディーを聴かせるスロウが並んでいるが、そこにはチルでアンビエントなR&Bのモードを捉えた先鋭的なプロダクションが施されていたりもする。キャッチーだけどベタじゃない、そのバランス感覚がおもしろい。

「バラードを泣き歌チックに仕上げてもつまらないなと思って、尖った要素を入れたりしましたね。そういうギャップが聴く人の心に訴えかけると思うんです」(GIORGIO)。

「オートチューンだからこそ感情的に歌ってみたり。帳尻を合わせるような歌い方は好きじゃないし、他の人が良しとするバランスは求めていないんです」(TOKO)。

So'Fly史上、最高にポップで最高にエッジー。かつ、その2つの要素が至極自然な形で共存し、アルバムとして結実しているように思う。その健やかな佇まいには、現在の彼らの制作スタイルが影響しているのかもしれない。

「今回はA&Rとかディレクターがいないんで、曲作り以外のところが大変でしたね。でも、だからこそ自由にできる。これがいまのアーティストの形だと思うんです。間に人がいないぶん、リスナーともダイレクトに繋がるから、自然と求められているものが感じられる。そこでバランスが取れるのかなと」(GIORGIO)。



▼GIORGIO CANCEMIがプロデュースし、TOKOもサポートしたTANAKA ALICEの2013年作『TOKYO GIRL』(ATLAS/Village Again)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2014年01月23日 16:45

更新: 2014年01月23日 16:45

ソース: bounce 362号(2013年12月25日発行)

インタヴュー・文/澤田大輔

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