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インタビュー

トニとベイビーフェイス、それぞれの繰り返した出会いと別れ、そして...めぐり逢い



LA・リードと組んだベイビーフェイスがプロデューサーとして至高の地位に昇り詰めんとするタイミングで、その浮上に大きく寄与したのがトニだったのは本文でも触れた通り。“Another Sad Love Song”や“Breathe Again”といったヒット群を含む初作『Toni Braxton』(93年)により、彼女は翌年のグラミーで最優秀新人に輝く。セクシーさを強調した96年の2作目『Secrets』は1500万枚超のセールスを記録するが、その原動力となったのもフェイスによるスムースな全米No.1ヒット“You're Makin' Me High”だった。一方、同年にフェイスはソロ歌手としての4作目『The Day』を発表し、愛息の生まれた喜びを綴った表題曲などで普遍的なシンガー・ソングライター的な路線に開眼している。ただ、それは時代の先頭に立つ革新的なクリエイターとしての後退をも意味していた。

そんな理由もあってか両者の蜜月は終わりを告げ、3作目『The Heat』(2000年)からは彼の仕事がシングル曲に選ばれることはなくなった。替わってトニが全幅の信頼を預けるようになったのが、同作で出会ったミント・コンディション(後に脱退)のケリ・ルイスだったわけだ。2001年にケリと結婚したトニは以降の作品を夫婦主導で作るようになり、フェイスの参加は1曲ずつに激減する。

彼女の5作目『Libra』に参加したフェイスは、息子に向けて妻を讃えてみせる“She”や別れの情景を綴った“Goin' Outta Business”を意味深に収めた『Grown & Sexy』の発表後、13年連れ添った夫人のトレイシー(実業家としても成功したヤリ手の美女)と離婚。盟友LAがボスを務めるアイランドに移っての『Playlist』(2007年)はカヴァー主体の内容ながら、数曲用意された書き下ろしナンバーは、離ればなれの息子を慰めたり、わざわざ高慢な女性を罵ってみたり、プライヴェートでの傷の深さを隠しきれない内容になっていた。

一方のトニはケリとの別離など多くのスキャンダルや災難に見舞われながら『Pulse』(2010年)を発表。〈もう愛してないから!〉と歌う“Yesterday”のヒットを生んだ同作は、フェイスが不参加な初めての作品でもあった。

なお、ブラクストンズ時代にはLAとフェイスからスルーされ、以降も長らく〈トニの妹〉に甘んじてきたテイマーが、エピックの代表に就任したLAと契約して大きな成功を記録したことも付け加えておきたい。こちらの〈カップル〉にも注目である。



▼トニ・ブラクストンの作品を一部紹介。
左から、93年作『Toni Braxton』、96年作『Secrets』、2000年作『The Heat』(LaFace/Arista)、2002年作『More Than A Woman』(Arista)、2005年作『Libra』(Blackground/Universal)、2010年作『Pulse』(Warner Bros.)、テイマー・ブラクストンの2013年作『Love And War』(Streamline/Epic)

 

 

▼ベイビーフェイスの作品を一部紹介。
左から、96年作『The Day』(Epic)、2005年作『Grown & Sexy』(Arista)、2007年作『Playlist』(Island)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2014年02月05日 17:59

更新: 2014年02月05日 17:59

ソース: bounce 363号(2014年1月25日発行)

文/出嶌孝次

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