小西氏自筆のライナーノーツによると、今年の正月、エール・フランスの機内でアンリ・サルヴァドールのビデオを観て、ムッシュのレコードを作るという10年来の誓いを新たにしたことになっている。だが、本当のきっかけは、あるとき小西氏の頭のなかを“ソー・ロング・サチオ”のイントロの、ピアノと口笛がループし始めたことにあることをぼくは知っている。
「あのイントロをループして、ムッシュの語りを乗せただけで、最高のトラックが作れるよね……!」
──そして、その言葉どおりの〈新曲〉“ソー・ロング20世紀”を核に据え、ピチカート・ファイヴの『月面軟着陸』(90年)や『女性上位時代』(91年)の原点に回帰、〈リミックス〉や〈インタヴュー〉など〈結局オレってこうなんだよね〉的芸風が洗練の極みに達したことを身をもって──他ならぬムッシュかまやつという、20世紀の日本を代表する粋人の半生をもって──証明。小西氏は、おそらくカメラを回しても、トリッキーなドキュメンタリストであるだろう。